「……え? ちか、くん?」
立派な着物に身を包んだチカゼが、茶事の準備をしていた。葵が戸を開けた瞬間から、二人の動きがぴたりと止まっている。
葵は、何故慣れた様子で準備をしているのか、と。チカゼは、何でお前がここに来ているのか、と。お互いがお互いを見たまま固まっていた。
「どう、して」
なんとか振り絞った声でチカゼがそう言う。
「ち、ちかくんこそ?」
そして何故か疑問系になる葵――――しかしそこに、ウサギの救世主が現れた!
くいくいっと、葵は着ている衣装の裾を引っ張られる。こてんと上目遣いで首を傾げられて、本当にこれは耐えられなくなり、ウサギさんを抱き締めてしまった。
「ぎゅーっ!」
「?!?!」
「おま、何して……!」
「あ。もしもし、警察ですか。今ウチの可愛いウサギが変態に襲われてるんです。場所は桜ヶ丘高校の――」
「わあわあ! もう放したから! 警察さんだけはやめてー……!!」
抱き締めた瞬間チカゼに非難の声を浴びせられそうになったが、その前にジャックとまめの木のジャックに仮装したヒナタが警察に通報したので、勢いよくウサギとカメのウサギに仮装したオウリから離れた。
「(あれ? 通報済みになってない?)」
((…………))
「(え?! 本気なの!? 終わちゃうよこの作品!)」
((まあそれはさておいて))
「(置かないでよ! わたしには重要な問題だよお?!)」



