そして葵は、後ろに向けて青い薔薇でいっぱいのブーケを放り投げた。
誰に渡ったかはわからない。それでも。その人だけでも今、このひと時幸せだった思いを、分けてあげられたらいいなと。……そう願う。
「それじゃあ戻りましょうか」
目を閉じたまま動かない彼の腕に、そっと触れる。眉間に皺を寄せて何を考えているのだろうと思っていたら急に体が浮いた。気付いた時にはもう、葵の体は彼の腕に抱えられていた。
「それじゃあ今この時だけは、俺が君を幸せにしてあげる」
そして葵を愛おしげに見つめながらとんでもない爆弾を落としてきたので、葵は自分の顔が真っ赤になるのを止められない。
そんな状態のまま、彼は葵を抱き上げたままステージへと戻っていく。葵は脱げそうになる赤い靴を気にしながら尋ねた。
「……重く、ないですか?」
「全然? 寧ろもっと重くてもいいくらい」
愛おしげな表情を直視できなくて、慌てて顔を逸らせる。
「あ。照れた。恥ずかしがり屋さんなんだね」
「し、……知りませんっ!」
葵は慌てて、自分の頭に乗せていた青い薔薇の花冠を、彼の頭に押しつける。ステージへ帰ってくる道は、本当に彼らのためにあるのかと思うぐらい、光り輝いていた。
「例え、この一瞬だったとしても。……俺は、君といられて幸せだった」
彼は下ろす前にもう一度、そっとおでこにキスを落とし、真っ赤になった葵を愛おしげに見つめた。
しばらくしんと静まりかえっていた会場に、ぽつりぽつりと手を叩く音が響いていく。彼がゆっくりと葵を下ろした頃には、それは会場中に響き渡った。二人はもう一度目を見て笑い合った。



