すべてはあの花のために③


 そう言って彼が腕を差し出してくれたので、葵はそれに絡ませてゆっくりとアリーナの方へ進んでいく。実況の人も、もう言葉が出ないようだ。

 彼のタキシードは白で統一され、ネクタイと靴だけが、彼の髪と瞳と同じ黒で絞められている。胸元には、青い薔薇の造花が飾られていた。
 そして彼女のウエディングドレスも、白で統一されたビスチェタイプのドレス。そこには白の薔薇の花が散りばめられている。彼女の手元には、青い薔薇でいっぱいのブーケが。髪型は編み込まれており、ブーケと同じく青い薔薇で作られた花冠が控えめに彼女の頭を飾る。
 耳には真っ白の薔薇で作られたイヤリング。そして胸元にはガラスのハートのネックレスが、静かに揺れていた。


 それは、中央までの道のり。


「『あおい』」


 一瞬、名前を呼ばれたのかと思った。


「実は、サムシングフォーとか。一応気にしてみたりして」


 確かに、彼の胸元には青い薔薇が印象的だ。


「『古いもの』は、今は見えないんだけど、シルバーアクセ。ペンダントをしてるんだ」


 彼はふわりと笑うので、葵もそれにつられて笑う。


「『新しいもの』は、靴」


 そう言う彼は、なんだか楽しそう。


「『借りたもの』は、ネクタイ」


 にこっと、最後は葵の方を向いて。


「『青いもの』は、この青い薔薇の造花」


 どやーって、可愛い顔でそんなことを言う彼に自然と笑いが漏れる。


「あれ? おかしかった、かな?」

「ふふ。……ええ。とても」