葵がステージの端に立つと、先程の彼が真ん中で待っている。彼は目を見開いている。そんな彼に向かって葵はゆっくり。一歩、また一歩と近づいていく。
先程まで会場中に響いていた悲鳴と奇声が一転、葵の姿が見えた瞬間、言葉を失ったようにしんと静まりかえる。目の前まで来た葵がにっこり笑うと、一瞬目を見張った彼もにこっと笑い返してくれた。
「すごい、綺麗だ」
「ありがとう。あなたも素敵」
まるで合わせたかのような、真っ白なウエディングドレスとタキシード。
「きっとあなたなら、それを着ると思ってた」
「はは。それは褒められてる?」
「もちろん。だから、できればもっと踏み込みたいなと思って」
「俺も、君ならそうするんじゃないかとそう思ってたんだ」
彼は【あるもの】を取り出す。まずは彼の方が、葵の左手を取って薬指へとそれをはめて行く。
「よかった、入って」
「逆にピッタリで怖いけど」
「ははっ。そんなこと言わないでよ」
小さく笑いながら、彼は自分の左手を葵の前にゆっくりと出す。
「君も、持ってきてるんでしょう?」
はにかむ彼に葵もにっこり笑って、彼の左手を取って薬指に持って行く。
「いや、俺もビックリだよ」
「わ、わたしも勘で選んだんですけど」
二人の左手の薬指には、仮ものの【指輪】が光り輝いていた。
「取り敢えず、行きましょうか。花嫁さん?」
「ふふ。……はい。花婿さん?」



