そんなことを考えながら歩いていると、たくさんの生徒に「お綺麗ですう!」とか「絶対喫茶店行きますので、連絡先をおおおー」なんて言葉が飛び交っていたが、愛想だけ振りまいて個人情報だけは死守しておいた。
「(あ。そろそろ一般の人たちの入場が始まる)」
時刻は11時前。入場の際は先生方が門のところにいて、校内地図と二日間のプログラムが書かれたプリントを手渡ししたり、人が少なったら自由に取れるよう入り口に置いておくようになっている。
「(そんなにすぐは解けないようにクイズは作ってある。ちょっと早いけど、念のためわたしは11時半過ぎぐらいに生徒会室に行けばいいかな)」
そう思って校舎を出て、渡り廊下を歩いていると――――。
「(――……ッ!?)」
嘲笑っているような視線を感じ、全身が総毛立つ。
「(……な、に? きもち、わるい……)」
その視線は途切れることなく、ずっと葵に付き纏ってくる。
「(……っ、なにっ。もう、やめてよ……っ)」
渡り廊下を走り、葵が辿り着いたのはこぢんまりとした日本庭園のような建物。
「(と、取り敢えず、あそこに……)」
確か、どこかのクラスが茶室で茶事を開くって言ってた。少しだけ居座らせてもらおう。
そう思って少し控えめに戸を開くと、まだ準備中なのか中に人はいなかった。いや、お客様はいなかったのだが、そこにいたのは――――。



