その日、テラスはライキスとタキノリと3人で食事をする機会があった。
本当はアイリも来るはずだったが、服飾の課題に思った以上にてこずり、このメンバーになったのだ。
アイリ抜きでライキスと会う機会はなかなかない。だから、テラスは聞いてみようと思った。
恋愛を理解したら、少しはこのモヤモヤが晴れるかもしれない。
「ねぇ、ライキスは、どうしてアイリを好きになったの?」
それは唐突な質問だった。
ライキスは食事の手を止めてテラスを見る。
タキノリは、ギョッとした表情だ。
「どうした?突然」
「アイリからは出会いの経緯とか細かく聞いてるんだけど、ライキスから聞いたことないな~と思って。アイリがいない方が、ライキスも話しやすいでしょう?」
「ランチの話題か?」
タキノリが突っ込む。
「ダメ?」
テラスはライキスを見た。
「いいよ」
ライキスはテラスの真剣な顔を見て頷いた。冷やかしではないようだ。
「どうやって好きになったの?いつ、好きだって気付いたの?」
すかさずテラスの質問が飛んでくる。
「最初に出会ったのは食事会だよ。たまたま向かいの席で会話が弾んだ。
話の流れでアイリに料理を作る約束をして、後日ご馳走したんだけど、あまりに美味しそうに食べるアイリに惚れた」
ふふっと笑うライキス。
「そ、それだけ?」
拍子抜けするテラス。
人を好きになる過程はもっと複雑だと思っていたのだ。
「う~ん、細かく話せば、食べっぷりに惚れたのはきっかけに過ぎなくて、その後、会い続けているうちに、話しているときのアイリの様子や考え方、仕草や表情、全部が好ましく感じたんだよな」
当時を思い出すように、優しい笑顔でライキスは話す。
「気付いたら、目が離せなくなってた。モタモタして他の誰かにとられたらマズいと思って、告白したんだよ」
「ふ~ん…」
しみじみと相槌を打つテラス。
タキノリも聞き入った。
「私はアイリから色々話を聞いているからね、これは絶対ありえないって言い切れるんだけど、もし、もしね、告白を断られたら、どうした?」
「なんでそんなこと聞くんだ?」
聞き返すライキス。
「え~と…、なんとなく」
歯切れの悪いテラスをタキノリは凝視した。
「なんとなくで質問されてもなぁ。まぁ…、簡単には諦めなかっただろうな」
「そっか…」
俯いて考え込むテラス。
「何かあったのか?」
タキノリはテラスに聞いた。
「え!?」
ビックリしてタキノリを見るテラス。
「何もないよ」
(何かあったな…)
タキノリは確信した。テラスは嘘が下手過ぎる。
「ライキスはアイリの前にも好きになった人いたの?」
テラスの質問はまだまだ続く。
「そうだなぁ…、いいなと思う女の子はいたな。でも、アイリに対する感情とはちょっと…かなり違ったかな」
ライキスはテラスの問に丁寧に答えた。
テラスが今何かを真剣に考えていると感じたからだ。
「どう違うの?」
「う~ん、諦めることが簡単か否かってところかな」
「ん?」
ちょっと良くわからず、首を傾げるテラス。
「いいな、と思う程度なら、その女の子に既に相手がいて断られても、割と簡単に切り替えられるけど、もし、アイリに断られたら、そうはいかなかっただろうな」
「そう…なんだ…」
そしてテラスは黙り込んだ。
ライキスはテラスの次の言葉を待ち、タキノリはテラスの表情から何かを読み取ろうとした。
「好きってとても強い感情なんだね」
ポツリとテラスが感想を漏らす。
「そうだな。自分が止められなくなることも、あるよな」
「そうなの?」
何気無いライキスの相槌に、テラスは強く反応した。
「そういうことは、あったな。自分のことをコントロールできるうちは、まだ本気の好きに至ってなかったのかもな」
「本気…かぁ」
テラスはミユウのことを思った。
泣きながら訴えてきたミユウ。彼女の気持ちがまっすぐに伝わってきた。
強い強い感情だった。
自分もいつか、あんな風に誰かを好きになる時が来るのだろうか。
そう遠くない未来、どこかの誰かと結婚しなければならない。
どんな相手なのだろう。
強烈な気持ちを自分が持つことも恐いと思うし、好きでもない相手と結婚することも想像がつかない。
以前アンセムに、恋愛に興味を持たないテラスがわからないと言われた事を思い出す。
みんな、強い感情で結びついた相手と生涯を共にしたいんだ。
だからこそ、必死になって相手を探す。
自分は今まで何をしてきたのか。
真剣にアンセムを想うミユウ。
お互いを大切にし合うアイリとライキス。
自分の気持ちと向き合うために、ミユウと決別したアンセム。
みんな、自分と向き合っている。
わからないことは面倒臭い。そう思っていた自分。
それは、単なる逃避なのかもしれない。
その後テラスは考え込んでしまい、ライキスとタキノリは顔を見合わせるしかなかった。
本当はアイリも来るはずだったが、服飾の課題に思った以上にてこずり、このメンバーになったのだ。
アイリ抜きでライキスと会う機会はなかなかない。だから、テラスは聞いてみようと思った。
恋愛を理解したら、少しはこのモヤモヤが晴れるかもしれない。
「ねぇ、ライキスは、どうしてアイリを好きになったの?」
それは唐突な質問だった。
ライキスは食事の手を止めてテラスを見る。
タキノリは、ギョッとした表情だ。
「どうした?突然」
「アイリからは出会いの経緯とか細かく聞いてるんだけど、ライキスから聞いたことないな~と思って。アイリがいない方が、ライキスも話しやすいでしょう?」
「ランチの話題か?」
タキノリが突っ込む。
「ダメ?」
テラスはライキスを見た。
「いいよ」
ライキスはテラスの真剣な顔を見て頷いた。冷やかしではないようだ。
「どうやって好きになったの?いつ、好きだって気付いたの?」
すかさずテラスの質問が飛んでくる。
「最初に出会ったのは食事会だよ。たまたま向かいの席で会話が弾んだ。
話の流れでアイリに料理を作る約束をして、後日ご馳走したんだけど、あまりに美味しそうに食べるアイリに惚れた」
ふふっと笑うライキス。
「そ、それだけ?」
拍子抜けするテラス。
人を好きになる過程はもっと複雑だと思っていたのだ。
「う~ん、細かく話せば、食べっぷりに惚れたのはきっかけに過ぎなくて、その後、会い続けているうちに、話しているときのアイリの様子や考え方、仕草や表情、全部が好ましく感じたんだよな」
当時を思い出すように、優しい笑顔でライキスは話す。
「気付いたら、目が離せなくなってた。モタモタして他の誰かにとられたらマズいと思って、告白したんだよ」
「ふ~ん…」
しみじみと相槌を打つテラス。
タキノリも聞き入った。
「私はアイリから色々話を聞いているからね、これは絶対ありえないって言い切れるんだけど、もし、もしね、告白を断られたら、どうした?」
「なんでそんなこと聞くんだ?」
聞き返すライキス。
「え~と…、なんとなく」
歯切れの悪いテラスをタキノリは凝視した。
「なんとなくで質問されてもなぁ。まぁ…、簡単には諦めなかっただろうな」
「そっか…」
俯いて考え込むテラス。
「何かあったのか?」
タキノリはテラスに聞いた。
「え!?」
ビックリしてタキノリを見るテラス。
「何もないよ」
(何かあったな…)
タキノリは確信した。テラスは嘘が下手過ぎる。
「ライキスはアイリの前にも好きになった人いたの?」
テラスの質問はまだまだ続く。
「そうだなぁ…、いいなと思う女の子はいたな。でも、アイリに対する感情とはちょっと…かなり違ったかな」
ライキスはテラスの問に丁寧に答えた。
テラスが今何かを真剣に考えていると感じたからだ。
「どう違うの?」
「う~ん、諦めることが簡単か否かってところかな」
「ん?」
ちょっと良くわからず、首を傾げるテラス。
「いいな、と思う程度なら、その女の子に既に相手がいて断られても、割と簡単に切り替えられるけど、もし、アイリに断られたら、そうはいかなかっただろうな」
「そう…なんだ…」
そしてテラスは黙り込んだ。
ライキスはテラスの次の言葉を待ち、タキノリはテラスの表情から何かを読み取ろうとした。
「好きってとても強い感情なんだね」
ポツリとテラスが感想を漏らす。
「そうだな。自分が止められなくなることも、あるよな」
「そうなの?」
何気無いライキスの相槌に、テラスは強く反応した。
「そういうことは、あったな。自分のことをコントロールできるうちは、まだ本気の好きに至ってなかったのかもな」
「本気…かぁ」
テラスはミユウのことを思った。
泣きながら訴えてきたミユウ。彼女の気持ちがまっすぐに伝わってきた。
強い強い感情だった。
自分もいつか、あんな風に誰かを好きになる時が来るのだろうか。
そう遠くない未来、どこかの誰かと結婚しなければならない。
どんな相手なのだろう。
強烈な気持ちを自分が持つことも恐いと思うし、好きでもない相手と結婚することも想像がつかない。
以前アンセムに、恋愛に興味を持たないテラスがわからないと言われた事を思い出す。
みんな、強い感情で結びついた相手と生涯を共にしたいんだ。
だからこそ、必死になって相手を探す。
自分は今まで何をしてきたのか。
真剣にアンセムを想うミユウ。
お互いを大切にし合うアイリとライキス。
自分の気持ちと向き合うために、ミユウと決別したアンセム。
みんな、自分と向き合っている。
わからないことは面倒臭い。そう思っていた自分。
それは、単なる逃避なのかもしれない。
その後テラスは考え込んでしまい、ライキスとタキノリは顔を見合わせるしかなかった。



