次の日の放課後。時刻は17時前。17時半からは業者との打ち合わせが入っている。
しかし昨日あんな別れ方をしたこともあり、生徒会室へと向かう葵の足取りは重かった。
「あ。下僕、遅いよ」
生徒会室にはすでにヒナタが来ていた。心配して損をするほどの通常運転に、葵は隠れてほっと息を吐く。
「ごめん遅くなって! 打ち合わせは確か視聴覚室であるんだよね?」
「うん。まあ、そうなんだけど……」
安心したのも束の間。彼の様子が少しおかしいことに気付く。これは……――焦り?
「あんたさ、昨日の資料持ってないよね」
「え? 持ってないよ? 昨日は確かここの引き出しに……――あ、れ」
「ないんだよ。昨日ちゃんとここに入れてたのはオレも見てたのに」
先日作成した資料が、何故かなくなっていた。
まさか、足が生えて逃げ出したとでもいうのだろうか。
「昨日、ちゃんと鍵閉めて帰ったよね?」
「うん。あんたが閉めてたの、オレも見てた」
「……去年の資料は?」
「それもない」
打ち合わせまであと30分。30分では流石に一から作成し直すのは厳しいだろう。



