――――その帰り道。
「あ。そういえばヒナタくんって、どうしてツバサくんとは別々で帰ってるの?」
「どうでもいいじゃん」
「そ、そっか。それもそうだね~!」
「それはそうと、どうしてあんたは本当の自分隠すの」
「……どうでもいいでしょうそんなこと」
「あっそ」
葵はヒナタとの会話に大苦戦していた。
「ひ、ヒナタくんってさ、すっごい美少年だよね! わたしビックリしたんだよー。なんで九条家はみんな美しいかね!」
「……オレは」
「うん?」
「……いや。そう? ありがと」
小さな感謝が返ってきて、この話題なら大丈夫かもしれないと、葵は少しだけ安堵していた。
「うんうん! だからかな? オレンジ色の髪もすごくよく似合って――」
決して、調子に乗っていたわけじゃない。ただ、会話ができたことが……ありがとうと言われたことが、嬉しかっただけ。
「オレには近づかないでくれる」
「――!!」
「詮索されるの嫌いなんだよ。友達だったとしても、これ以上は入ってこないで」
「……そ、そうだねごめん! 申し訳ない!」
「ん。じゃあオレはこっちだから。また明日」
「う、うん。……さようなら」
だから、完全な拒絶に、どうすればいいかわからなくて。
「(な、何がダメだったのかな。こ、こんなこと初めてだから加減が……)」
だから、俯きながら帰路についた葵は気付けなかった。
その後ろを、誰かが付けたことに――――。



