すべてはあの花のために②


 ――――その帰り道。


「あ。そういえばヒナタくんって、どうしてツバサくんとは別々で帰ってるの?」

「どうでもいいじゃん」

「そ、そっか。それもそうだね~!」

「それはそうと、どうしてあんたは本当の自分隠すの」

「……どうでもいいでしょうそんなこと」

「あっそ」


 葵はヒナタとの会話に大苦戦していた。


「ひ、ヒナタくんってさ、すっごい美少年だよね! わたしビックリしたんだよー。なんで九条家はみんな美しいかね!」

「……オレは」

「うん?」

「……いや。そう? ありがと」


 小さな感謝が返ってきて、この話題なら大丈夫かもしれないと、葵は少しだけ安堵していた。


「うんうん! だからかな? オレンジ色の髪もすごくよく似合って――」


 決して、調子に乗っていたわけじゃない。ただ、会話ができたことが……ありがとうと言われたことが、嬉しかっただけ。


「オレには近づかないでくれる」

「――!!」

「詮索されるの嫌いなんだよ。友達だったとしても、これ以上は入ってこないで」

「……そ、そうだねごめん! 申し訳ない!」

「ん。じゃあオレはこっちだから。また明日」

「う、うん。……さようなら」


 だから、完全な拒絶に、どうすればいいかわからなくて。


「(な、何がダメだったのかな。こ、こんなこと初めてだから加減が……)」


 だから、俯きながら帰路についた葵は気付けなかった。

 その後ろを、誰かが付けたことに――――。