「そういえばキサちゃん、みんなご両親とかは来られるのかな?」
「うん! 毎年うちの親がみんなの応援するんだー。みんな恥ずかしいって言いながら嬉しそうなんだよ~。あっちゃんのところは?」
「うちは……来たとしても、わたしの執事が来るくらいかな?」
「……そっか! じゃああたしがあっちゃんの応援してあげるね!」
「うんっ。ありがとう! 楽しみだね~!」
その後生徒会室へ帰ってきた葵たちは、それぞれ各役職の打ち合わせをし始めた。
ちなみに葵は業者への指示係。一緒に組むヒナタと、明日の放課後打ち合わせに来てくれる業者用の資料作成に取り掛かっていた。今は、昨年の指示書と照らし合わせながら、当日自分たちが出る種目に印をつけている。
「ヒナタくんは司会と掛け持ちだから、基本固定のわたしが主に指示を出すね。何かあった時も、動くのはわたし中心で」
「そうしてくれると助かる。オレが指示を出すのは基本あんたがいない時。それ以外は申し訳ないけどお願いする」
「うん! 任せて!」
「(いい具合に誘導したの絶対わかってない。このままだったらオレ、殆ど仕事しなくていいやつ)」
明日の打ち合わせ内容も決まり、ヒナタはできた資料をとんとん机で整える。葵たちが作業している間にそれぞれの打ち合わせが終わったらしく、みんなはもう下校していた。
「んじゃ帰ろ」
「うん! 明日ねヒナタくん!」
葵がそう言うと、ヒナタは何故か扉の前で固まった。
「あれ? どうしたの?」
「……帰らないの?」
「うん? 帰るよ~。だから、さようなら」
「……いや。だから……」
初めは、何を伝えようとしてくれているのかわからなかった。でも、扉の前から動こうとしない彼に、もしかして……と。淡い期待を胸に、「ちょっと待ってて!」と一言告げた葵は、バババアーッと片付け猛ダッシュでヒナタのところへ。
「ひ、ヒナタくん! 一緒に帰ろ!」
「ん」
たったそれだけの返事が嬉しくて、パアッと顔が綻ぶ。
最後に生徒会室を出た葵たちは鍵を閉めて、職員室に戻してから帰宅した。



