「それはそうと、みんなはどうしてそんなに嫌がってるの? チカくんなんかすでにヒーラー・シャインしてるじゃん」
「ばか! それとこれとは話が――」
「へえ。チカもそういうの好きなんだ」
「チカね、結構ノリノリだったのよ」
「やめろ! 記憶から抹消しろっ!」
チカゼがキサとヒナタにいじられている中、葵は反対の理由をツバサに聞きに行く。
「別に、仮装自体の案がダメってわけじゃないのよ。でもそれが、【魔法少女】に縛られたら、アンタも嫌でしょう?」
どうやらアカネは、仮装自体ではなく、魔法少女の方を推しているよう。学校全体がそんな恰好では、保護者や来賓は会場を間違えたんじゃないかと思うぞ? 行くならコ○ケに行きなさいコ○ケに。
「そういえば、後夜祭で似たようなことするよね? それじゃダメなの?」
文化祭後に行われるのは、一人一人が“仮面”を装着するパーティーがある。
「ううぅ~……」
「(でも、そうとわかってても推したい理由があるのか)」
どう考えても不可能なこと。それなのに彼は先程からすごく悔しそうに項垂れていた。
会議だから、一人の意見を押し通すわけにはいかない。それも、ちゃんとわかっているのだろう。推したい理由も、言うつもりはないらしい。
残念だけど、こればかりはどうしようもない。
「ごめんねアカネくん。君の夢のために、学校全体は巻き込めないよ」
「……そうだね。みんな、ごめんね」
一応納得してくれたようだ。そこまで推したいのなら、どこかで叶えてあげたいけれど。
「それじゃあさ、あおいチャン今度、マミリンの衣装着てみてくれるう?」
「え? 着るだけなら全然いいけど」
「わあい! じゃあデートしようねえ!」
「えっ。デート?」
アカネ以外の全員が、目を丸くして固まった。
「いやあ。やっと念願のデートの約束を取り付けられたよお。ここまで長かったなあほんと」
「あ、アカネくん? まさかそれがしたいがために、言い出したんじゃ……?」
しかし彼からの返答はなく、ただ「ふんふふ~ん」と楽しそうに鼻歌を歌っていただけ。
なんとか仮装行列は阻止できたけれど……なんという演技派。彼が言うと冗談に聞こえないから。
「(でもちょっと待って。もしかしてわたし、デートに魔女っ子衣装着るってこと?)」
((それならそれで、オタクとのデート楽しみネ))
「(うう。なんか、嫌な予感しかしないんだけど……)」
若干の不安と好奇心を抱いていた葵だった。



