「……どういうことだ、理事長」
「よかったね。ちゃんと彼女の口からヒントがもらえて」
「ヒント? それって一体……」
「……君が踏み込もうとしているものは、君よりも残酷な運命だ。それでも君は、知りたいと思うか」
じっと理事長は彼の瞳を見つめる。
「もちろんだ。俺を止めてくれた葵を、俺が絶対――――止めてみせる」
返ってくるのは、意志の強い光を帯びた、灰銀の瞳。
「ぼくもこれ以上は伝えられない。もし、知りたいと思うならば……」
彼女に踏み込む覚悟があるのならば、君自身が彼女に近づいて知りなさい。たった独りで。その、残酷な運命を。
「……わかった。俺は、もうずっとあいつのそばにいる。……――離してなんか、やらないよ」
彼もこの部屋から出て行く。
新たな決意と覚悟を胸に秘めて――――。



