すべてはあの花のために②


「食事制限やら運動やらきっちり指導しするからね。頑張って血糖値を抑えていこうね!」

「……一緒にいてくれるのか?」

「もっちろんだ! いい? 糖尿病っていうのは――――」


 そうしてしばらくの間、葵の糖尿病知識が披露されました。


「さあ! 今日から食事療法と運動療法で血糖値を下げるぞ! 絶対薬物療法なんかさせないからあ!」

「はい葵先生! それは怖いので、俺頑張ります!」

「うむ。いい返事だアキラくん。しかし、そう言いながら胸ポケットから飴ちゃんを出すのは止めましょう」

「でも先生。急には止められません。禁断症状が出てしまいます」

「そうですね……それなら、一日に何個までと決めましょう。流石に急には厳しいですからね。ゆっくり体にも慣らしていってあげましょう」

「はい先生! よろしくお願いします!」

「よろしい! では、先生と一緒にこれから武道場へ行って運動でもしましょうか」

「はい先生! 俺柔道がいいです!」

「おや? その理由は?」

「技と見せかけて先生を襲――――んんーッ!」

「アキ! それ以上はダメ! 俺の出番なくなるから!」

「……? アキラくん? カナデくん?」


 その後、アキラとカナデによる取っ組み合いが行われ、『これが運動ってことでいいか』と、葵はアキラ専用カルテにチェックを入れたのだった。


「ありがとね。みんなを代表して言っておくわ」

「♪~♪」


 そうこうしていると、制服をちょんちょんと引っ張られた。両サイドにはオウリとツバサが。


「……わたしは、彼を止められたと思う?」

「え? そうなんじゃないの?」

「??」

「……うん。何でもないよ」


「でもね?」と、先程の不安そうな表情がまるで嘘のように、葵は満面の笑みを浮かべた。


「わたしはしたいようにしただけだから、お礼はいらないよ。だって友達であり仲間なんだから。わたしができるギリギリまで、わたしも諦めないし!」


 葵がそう言うと、ツバサとオウリは目を見開いている。
 そして彼らは、考え込むようにしてそれぞれ目線をみんながいる方へ向けるが――……二人の瞳は、どこかつらそうにみんなを見つめていた。