「それはそうとアキラくん! 自分で外せたんだね!」
「ああ。でも、なんで葵はこのことを知っていたんだ?」
「知らなかったよ? ただ、そうなのかなって」
「……どうして?」
「……アキラくんのことを心配してたお友達が、ずっと左耳を触っていたから。あと、カエデさんが『体に慣らす』って言ってたから。そうなのかなと」
納得してもらえただろうかと、上目遣いで彼の表情を確認する。すると彼は、「しょうがないな」と言いたげに、今回ばかりはそれ以上は聞かないでいてくれた。
「そうだ。葵?」
「うん――?」
ふうと一息つく暇もないまま名前を呼ばれた葵は、何故かアキラに体を引き寄せられ、そのままちゅっと軽い音を立てて頬にキスを落とされる。
「あっ、あきらくん?!」
「好感度が上がるように、俺も頑張ることにしたからよろしく」
顔を真っ赤にした葵が、その言葉の意味を理解する間もなく、復活したシントが間に割って入ってくる。
「もう! 二人の世界に入らないでよ! 葵! さっさと帰ってさっきの続きするよ!」
「え。じゃあ帰らない」
「馬鹿なこと言わないで」
「嫌だ。今日はアキラくんとこ泊まる」
「それも危険だから!」
「も? ……シント、襲う気満々じゃん。目がおかしい」
「シン兄キモい」
「シント、それは引くぞ」
「あぁああ~~俺の評価がぁああ~~……」
再び頭を抱えて項垂れるシントに小さく笑いながら、「そういえば」と、アキラに家の方は大丈夫なのか尋ねた。
「ああ、それなら大丈夫だ。今までしてきた記録を『皇の機密事項として漏らす』とでも言えば、しばらく大人しくなるだろう。俺は別に、皇自体の地位はどうでもいいし」
「……そっか。それじゃあこれからは、お父様とたくさん話してね。カエデさんもですよ?」
「ああ。もちろんだ」



