すべてはあの花のために②


「それはそうとアキラくん! 自分で外せたんだね!」

「ああ。でも、なんで葵はこのことを知っていたんだ?」

「知らなかったよ? ただ、そうなのかなって」

「……どうして?」

「……アキラくんのことを心配してたお友達が、ずっと左耳を触っていたから。あと、カエデさんが『体に慣らす』って言ってたから。そうなのかなと」


 納得してもらえただろうかと、上目遣いで彼の表情を確認する。すると彼は、「しょうがないな」と言いたげに、今回ばかりはそれ以上は聞かないでいてくれた。


「そうだ。葵?」

「うん――?」


 ふうと一息つく暇もないまま名前を呼ばれた葵は、何故かアキラに体を引き寄せられ、そのままちゅっと軽い音を立てて頬にキスを落とされる。


「あっ、あきらくん?!」

「好感度が上がるように、俺も頑張ることにしたからよろしく」


 顔を真っ赤にした葵が、その言葉の意味を理解する間もなく、復活したシントが間に割って入ってくる。


「もう! 二人の世界に入らないでよ! 葵! さっさと帰ってさっきの続きするよ!」

「え。じゃあ帰らない」

「馬鹿なこと言わないで」

「嫌だ。今日はアキラくんとこ泊まる」

「それも危険だから!」

「も? ……シント、襲う気満々じゃん。目がおかしい」

「シン兄キモい」

「シント、それは引くぞ」

「あぁああ~~俺の評価がぁああ~~……」


 再び頭を抱えて項垂れるシントに小さく笑いながら、「そういえば」と、アキラに家の方は大丈夫なのか尋ねた。


「ああ、それなら大丈夫だ。今までしてきた記録を『皇の機密事項として漏らす』とでも言えば、しばらく大人しくなるだろう。俺は別に、皇自体の地位はどうでもいいし」

「……そっか。それじゃあこれからは、お父様とたくさん話してね。カエデさんもですよ?」

「ああ。もちろんだ」