それ以上を言わなくて拍子抜けしたのか、首を傾げながら続けて「シン兄はもう帰ってこないのか」と聞かれる。
「そうだな。帰ってやりたいのは山々なんだけど」
「帰りたくない?」
「……いや。今はまだ帰れない」
「何か、しないといけないことがあるのか」
「ああ。俺の大事なもののために頑張らないといけないんだ」
――……いつかやってくる、その時のために。
「……俺に、何かできることは?」
「……お前も、踏み込む勇気があるか?」
「勿論だ」
「そうか」
心強いな、それは。
「……時々、違和感を感じる時がある」
それは、何にか――それとも、……誰にか。
「俺も踏み込むよ」
「覚悟はわかった。でも俺からは言えない。だから、お前自身が動け」
「は? ……なんで」
「今俺が言えるのは、変わらないということだけ。でも、変えなくちゃいけないということだけ」
だから、どうかお前も、ちゃんと見ていてやってくれ。
「(あいつが赤い花と混じって、黒い花を咲かさないように)」
蕾のまま枯れて――そして、……消えてしまわないように。



