すべてはあの花のために②


 それ以上を言わなくて拍子抜けしたのか、首を傾げながら続けて「シン兄はもう帰ってこないのか」と聞かれる。


「そうだな。帰ってやりたいのは山々なんだけど」

「帰りたくない?」

「……いや。今はまだ帰れない」

「何か、しないといけないことがあるのか」

「ああ。俺の大事なもののために頑張らないといけないんだ」


 ――……いつかやってくる、その時のために。


「……俺に、何かできることは?」

「……お前も、踏み込む勇気があるか?」

「勿論だ」

「そうか」


 心強いな、それは。


「……時々、違和感を感じる時がある」


 それは、何にか――それとも、……誰にか。


「俺も踏み込むよ」

「覚悟はわかった。でも俺からは言えない。だから、お前自身が動け」

「は? ……なんで」

「今俺が言えるのは、変わらないということだけ。でも、変えなくちゃいけないということだけ」


 だから、どうかお前も、ちゃんと見ていてやってくれ。


「(あいつが赤い花と混じって、黒い花を咲かさないように)」


 蕾のまま枯れて――そして、……消えてしまわないように。