すべてはあの花のために②


 それから一番心配していた「それで、糖尿病は治りそうか?」と聞くと、「糖尿病は一度罹ったら治らない病気だ」と何故か得意げに言ってくる始末。まだなってはいないとのことだったが、中学でその一歩手前になるとか、頼むからこれ以上兄ちゃんを心配させてくれるなよとぼやいた。


「というか、なんで知ってるんだ」

「ふっ。兄ちゃんを舐めるなよ?」

「……ふむ。ストーカーか」

「(※事実なので何も言えない)」

「どうだろう。やめられるかな……」

「大丈夫だ。お前の場合、明らかな拒否反応だろうからな、それの」

「でも、美味しいと感じてしまうようになってしまったし」

「程々に頼むよ」

「ん。わかった」


 ぼうっとするのも、眠くなるのも、そのうち落ち着いてくるだろう。それも、そのイヤーカフのせいだから。


「それで? 今の気分は?」

「最高。頭突き返してやりたいくらいには」

「それだけはやめておいてあげてくれる? 今あの子、お前のために氷買いに行ってるんだから」

「冗談冗談。……本当は、抱き締めたくて仕方がない」

「やったら許さないよ?」

「ちゃんと了承もせず抱き締めた人に言われたくないけど」


 完敗を食らったので、これ以上もう下手なことは言うまいと誓った。


「葵だけは、特別なんだ」

「……そっか。お前も、そう思ってくれてよかった」

「シン兄?」

「そういえばお前ら、パトロールしてるんだよな?」

「ああ。西方面のこと?」

「……それ、しないといけない?」


 言葉の中に何か違和感を感じたのか、アキは怪訝な顔をしながら「葵が心配か?」と聞いてくる。


「そうだね。心配は心配かな」

「無理はしていない。葵にもそう言われたから」

「そっか。……なら、いっか」