すべてはあの花のために②


「さあ! 思い切ってみろっ! 俺の自慢の弟だろうが!」

「――! …………ッ」


 シントの声が、アキラの心根まで届いたのだろう。
 彼は奥歯を噛み締めながら、その震える手をゆっくり……そして確実に、左耳へと持って行く。


「…………ッはっ」


 そして、イヤーカフを自らの手で外した彼の瞳には、強い光が宿っていた。


「…………っ」

「よくできました」


 シントは、外したイヤーカフを握り潰しながら俯いているアキラの頭を、しばらくの間撫で続けていた。