母さんは死んじゃったから、もうどうしようもできないけど。でも、父さんはまだ生きてる。
時々だけど話せるようになってきてるんだろ? ちゃんとおまえのことも思い出させてやろう? もちろん母さんのことも。
幸せだった頃があるからつらいんだ。それは誰だってそうなんだよ。
幸せだなとか、つらいなとか。そんな感情がないと、そもそも人間って生き物は成長できないんだから。
……父さんの時間は、あの時から止まったまま。だから、まずは父さんの時を動かしてあげよ?
それにはまず、お前が動かないといけない。お前が動いて、父さんにいっぱいいろんな話をしなくちゃいけない。もし自分が招いた結果だと思うなら尚更、そのことから目を背けるな。
「お前が怖いのは、父さんから嫌われることだろう? そんなの大丈夫に決まってるじゃないか。父さんが壊れる前に、お前に一度だって当たったことがあったか? 父さんはただ、何もできなかった自分が悔しくて壊れただけだ。お前のせいなもんか。俺がいなくなったのだってそうだ。皇自体の考えが怖かったから逃げただけだよ」
なあアキ。それ外してさ、父さんにいっぱい話しかけようよ。父さんも、自分のことなんか忘れてくれって言ったんだろ? こっちは忘れたくなんかないのにさ。父さんも、情けない自分を見て欲しくなかっただけなんだよ。
父さんも元気になったら、みんなで母さんのお墓参りに行こう。葵も、俺らのお母さんに、挨拶したいって言ってくれたんだ。……だから、お前が動け。
お前がちゃんと納得して、そして動け。【それ】を外しても、しばらくは後遺症が残ると思う。でも、すぐよくなるよ。元々付けてる間だけのものらしいし……症状も、まだ軽いみたいだしね。だから――――



