彼の左耳についている【イヤーカフ】を、シントは睨み付けるように指差した。
二人は、知っていたのかと目を見開いているが、葵とシントは真剣な顔を崩さない。
「……お嬢ちゃんも、知ってたのか」
その問い掛けに、葵は微笑むだけ。
「お前のせいなんかじゃないよ。それは、お前の事情をちゃんと聞いた葵だってそう言ってる。……ッ今回悪かったのは、お前のことを誘拐しようとした犯人と、記憶を消すだ何だ言ってる俺ら以外の皇の奴らだ。ちゃんとお前もわかってるんだろ? なのにどうしてお前は、それでもそれを外せないんだ」
「……俺は、自分で決めたから。これが一番いい方法だと、俺も納得した」
「アキ……」
「シント、ちょっといいかな?」
そう言った葵は、笑顔で綺麗な挙手をしていた。
「でも、お前黙っとくって……」
「うん。でもやっぱり、このビビりくんにめちゃくちゃ腹立っちゃったからさ? お兄ちゃんや、この子のこと一発活でも入れてもいいかな?」
「あ、葵?」
「ようし。お兄ちゃんが許そう」
「え? シン兄――!?」
許可が出るや否や、一瞬にしてアキラとの間合いを詰めた葵は、彼の胸倉を掴み、自分の頭を思い切り後ろに引いて、そして――――
ごっつーんっ!!
「いっ~~……ッ?!?!」
……アキラに、思い切り頭突きを食らわせたのだった。



