すべてはあの花のために②


 彼の左耳についている【イヤーカフ】を、シントは睨み付けるように指差した。
 二人は、知っていたのかと目を見開いているが、葵とシントは真剣な顔を崩さない。


「……お嬢ちゃんも、知ってたのか」


 その問い掛けに、葵は微笑むだけ。


「お前のせいなんかじゃないよ。それは、お前の事情をちゃんと聞いた葵だってそう言ってる。……ッ今回悪かったのは、お前のことを誘拐しようとした犯人と、記憶を消すだ何だ言ってる俺ら以外の皇の奴らだ。ちゃんとお前もわかってるんだろ? なのにどうしてお前は、それでもそれを外せないんだ」

「……俺は、自分で決めたから。これが一番いい方法だと、俺も納得した」

「アキ……」

「シント、ちょっといいかな?」


 そう言った葵は、笑顔で綺麗な挙手をしていた。


「でも、お前黙っとくって……」

「うん。でもやっぱり、このビビりくんにめちゃくちゃ腹立っちゃったからさ? お兄ちゃんや、この子のこと一発活でも入れてもいいかな?」

「あ、葵?」

「ようし。お兄ちゃんが許そう」

「え? シン兄――!?」


 許可が出るや否や、一瞬にしてアキラとの間合いを詰めた葵は、彼の胸倉を掴み、自分の頭を思い切り後ろに引いて、そして――――


 ごっつーんっ!!

「いっ~~……ッ?!?!」


 ……アキラに、思い切り頭突きを食らわせたのだった。