「ずず……シン兄、どこ行ってたんだ」
少し冷静を取り戻したアキラがシントに問い質す。
「あーどうすっかなあ。俺の話をするべきか、お前の話をするべきか……」
「? どういうこと?」
「取り敢えず今は正気っぽいから、俺の話でも大丈夫かな。あんま時間ないけど、聞きたいんでしょ?」
「うん」
「じゃあ話してやる。お前もちゃんと逃げずに聞いとけ」
「わかった」
「あ。先に言っとこ。……楓?」
「んあ? なんだ、どうした」
「アキをここまでちゃんと支えてくれてありがとう。それと父さんのことも」
「……そんなの、お安いご用だ。馬鹿野郎が」
「そっかそっか。……じゃあ楓も聞いてって。俺が今までどうしてたか」
そうしてシントは、皇から逃れ道明寺で素性を隠し、葵の専属の執事として働いていることを彼らに話した。
アキラとカエデは目を見開いて葵とシントを交互に見ている。まさかここが繋がっているとは思いもしなかっただろう。
「俺が皇の人間だって葵に話したのはついさっき。お前らには申し訳ないけど、葵が俺に踏み込んでこなかったら、俺は一生お前らと会う気はなかった。それでも今、こうして会いに来た」
一度葵へ視線を流してから、シントはゆっくりとアキラへ目線を合わせる。
「アキ。こんな俺を、葵は動かした。それが誰のためなのか、お前はちゃんとわかってるだろ。だから俺は、ここに来たんだ。お前を止めるために」
「シン兄……」
「俺はさ、怖かったんだ。お前らに会うのが。お前らのことが大好きだから。でも俺は見捨てた人間。嫌われても当然だと思ってた。……今まで、つらい思いさせて、ごめん」
「……俺はシン兄のこと、嫌ってなんかない」
「うん、そうだな」
「俺はただ。……ずっと、会いたかっただけだ」
ゆっくり、ゆっくりと、アキラは自分の胸の内をこぼしていく。
「でも、俺が母さんを殺した。父さんをあんな風にしたのも。だから、シン兄もいなくなった」
「ばっか。そんなわけないじゃん。俺がお前を嫌いになるわけないのに」
「でも俺は。次期皇の当主として皇を支えていくために。俺の罪を一生、背負って生きていかないと……」
「だから、【それ】を外そうとしないのか」



