「来てくださってありがとうございました。家の方は大丈夫でしたか?」
「恐らく大丈夫だと思われます。少しアキがぼうっとしてるので、活を入れてくると言って出てきましたから」
「そ、それで本当に大丈夫ですか?」
「これでも私、優秀な執事で通ってるので」
「そ、そうでしたか」
葵はふと横の彼を見るが、やはりぼうっとしている。
でも、ここは出る幕じゃない。たとえ遠回りだとしても、ここは彼にやらせることが一番の最適解だから。
「アキラくん、夜遅くに呼び出しちゃんってごめんね。今からちょっと車の中で話したいから中に入ってもらっていいかな?」
「…………」
今すぐ『それ』を取ってしまいたい衝動に駆られるが、葵は必死で堪えて二人を中に入れた。
――――パンッ!!
すると何故か、クラッカーの爆音がした。
「(確かにさっき、彼にやらせるのが一番だって言ったけどさ。そういう方法じゃないんだよ。どうしてこういう時に限ってボケに走るかなあ!?)」
でも、鳴らしたてのクラッカーを持ったシントが、とびっきりの笑顔で。
「久し振りっ! アキ! 楓!」
……なんて言うから。
まあよしとすることにした。



