「……どうして、俺ってわかったの」
「わからなかったよ? だって『シン』って付く人なんていっぱいいるし」
「なのにどうして?」
「……一つは、『シン兄』という人が4月に消えたこと。もう一つは口癖かな」
「口癖?」
「シント、これを見て欲しいんだ」
そう言って葵は彼から預かったロケットを出す。
「……これって……」
「シントもお世話になってた人から借りてきたの」
「楓……」
「今でも大事そうに首から提げてた。カエデさんも、シントのこと心配してたよ」
その彼が、言ってたの。『携帯さん』って。
それにアキラも言ってた。たったそれだけ。
「でも、そうだろうなって思ったよ」
「……楓のが、うつった」
「ははっ。そうだったんだね?」
シントは、ロケットの写真に目を細めながら、そっと触れる。
「よくわかったね、母親が違うって」
「男の子ってね、お母さんの遺伝子継ぎやすいんだって。だから、ご両親のどちらかの瞳は金色で、どちらかは灰色なんじゃないかなって思ってたんだけど。お写真のお母様は灰色で、お父様は黒色だったから。それなら……と思っただけ」
「うん。この瞳、実の母親譲りなんだ」
ふっと嬉しそうに頬が緩む。
「……ごめんねシント」
「うん?」
「わたしったら、シントのこと手放そうなんて微塵も思ってなくて。……皇には申し訳ないけど、シントはもうわたしだけのものだから。シントが帰るって言ったって、泣いて駄々捏ねたって放してあげるつもりは――」
「ぶっ! ……は。ははは……っ!」
「えっ? わたし、変なこと言った?」
「違う違う。……すごく、嬉しかっただけ」
「そ、そっか。それならよかった!」
つい嬉しくなった葵は、シントの頭をわしゃわしゃと混ぜ擦り回すように撫でた。



