「――?! ……ッ、うっ……!」
胃の奥底から、急激に迫り上がってくるものに耐えきれず、思わず膝を突く。
「……っは。まさか、白昼夢にまで出てくるなんてね」
点滴に繋がれた白い腕は日に日に痩せ細り、その姿を泣き叫びながら見つめていたその人は、徐々に人格を崩壊させ、幼い子どもの小さな肩にその全ての責任と後悔が押し付けられた。
……とんだ悪夢だ。こんなもの。
「まさか、怒ってる? だからあんな夢見せたの」
視線を上げた先、見つけた花に小さく問いかける。
「全部捨てて逃げたから。……約束、破ったから」
庭にまだ一株だけ咲いていたプリムラが、そよ風にやさしく揺れる。縦に揺れるそれは、まるで頭を下げているようで。
「……母さんのせいなわけあるか。父さんのせいでも、勿論あいつのせいでもない」
悪いのは全部。全部――――。
「……帰ってきた、か」
今度は横に揺れた花へ、小さく苦笑いをこぼす。
「大丈夫。わかってるよ。誰も……悪くなんてないんだ」
母さんも、父さんも、勿論あいつも。
「悪いのは全部、今もずっと怖がってる……どこかの馬鹿だからさ」
土を払いながら、ゆっくりと立ち上がる。
同時に鳴り始める携帯さんに、小さく頬を緩めながら手を伸ばした。
「……もしもし? どうしたの――――?」



