葵の言葉に、カエデは弾かれるように扉の方を振り返る。すると案の定、すぐに開いた扉からトーマがひょっこり顔を出した。
「それで? トーマさん、わたしたちの会話は聞こえましたか?」
「ううん全く。最初の、だーんっ! って音しかわからなかったよ」
「ああ。あれはあなたへの警告も兼ねていたので」
「そ、そうなんだ……」
その時、カエデは腕相撲で負けた手を思わず摩りました。そういえば、結構痛かっ……いや、手がもげるかと思ったと。
「そういえば、一つ聞き忘れていたことが」
「何だ?」
「高2になって、アキラくんが少し落ち着いたと聞いたんです。『わたしがいることがそうさせたんじゃないか』とある子から言われたんですけど、どうしてかわかりますか?」
「そんなことか。それはトーマでもわかるんじゃないのか?」
「あーそういうことか。……葵ちゃんね、似てるんだ。秋蘭のお母さんに」
「え? でも、この写真を見る限り……」
「雰囲気が、かな。それは本人に聞いてみるといいよ」
「……そうですね。彼を止めることができれば」
そうして葵たちは、皇を後にした。



