すべてはあの花のために②


 葵の言葉に、カエデは弾かれるように扉の方を振り返る。すると案の定、すぐに開いた扉からトーマがひょっこり顔を出した。


「それで? トーマさん、わたしたちの会話は聞こえましたか?」

「ううん全く。最初の、だーんっ! って音しかわからなかったよ」

「ああ。あれはあなたへの警告も兼ねていたので」

「そ、そうなんだ……」


 その時、カエデは腕相撲で負けた手を思わず摩りました。そういえば、結構痛かっ……いや、手がもげるかと思ったと。


「そういえば、一つ聞き忘れていたことが」

「何だ?」

「高2になって、アキラくんが少し落ち着いたと聞いたんです。『わたしがいることがそうさせたんじゃないか』とある子から言われたんですけど、どうしてかわかりますか?」

「そんなことか。それはトーマでもわかるんじゃないのか?」

「あーそういうことか。……葵ちゃんね、似てるんだ。秋蘭のお母さんに」

「え? でも、この写真を見る限り……」

「雰囲気が、かな。それは本人に聞いてみるといいよ」

「……そうですね。彼を止めることができれば」


 そうして葵たちは、皇を後にした。