「にしても、どうして踏み込んで来られる。お嬢ちゃんが今相手にしようとしてるのは、あの皇なんだぞ」
「もうある程度予想はついているんですけど、手札に強力な人がつくかもしれないのと……強いて言うならば、わたしにしかできないことだからです」
「ある程度予想はついてんのか? なら聞く必要はないんじゃ……」
「わたしには手札が少なすぎるので、少しでも確証を得るために話を聞かせて欲しいんです。……それを持ってまず『 』と話ができればと」
「――!? ……どこにいるのか知ってるのか」
「それはカエデさんのお話次第です。あくまで予想。確信がなければわたしも動けません。もしその人と話ができれば、わたしは『あの人』と言われる方にも勝負を挑みに行きますよ」
カエデは思わず天を仰いだ。
「……は。なんて心強いんだか」
「何言ってるんですか。あなたも行くんですよ」
「え」
「雇い主の間違った行動を正すのも、執事の役目だからですよ」
「……差し詰め俺も、お嬢ちゃんの手札の一枚ってわけか」
「はい。この勝負は最初から決着はついてたんですよ」
――あなたがわたしをここに入れた時点で。
「わたしは、負けられませんから」
「そうか。……じゃあ俺から一つ話しておこう。それ以外は多分、『あいつ』が話してくれると思うからな」
「わかりました。よろしくお願いします」
そうしてカエデが話すのは、彼が『あいつ』という人物のこと――――。



