本邸に負けてはいないぐらい豪邸。離れだというその立派な建物を見上げていると、すぐに向こうが出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいましたトーマ様」
「呼び捨てで構わないって言ったんですけどね」
「流石にここでは言えません」
「じゃあ、そういうことにしておきますよ」
「えーっと。……はじめまして。お邪魔させていただきます、あおいと言います。よろしくお願いします」
そう挨拶すると、大きな体格をした彼は一瞬目を見開く。
「……ご丁寧にありがとうございます。私の名前は楓と申します」
「――! あなたが、カエデさん……でしたか」
「はい。そうでございます道明寺様」
「……もう、ご存じなんですね」
「はい。トーマ様からご連絡がありました際、少しあなたのことを教えていただきました」
「ど、どこまでご存じですかっ?」
「? お名前だけですが……如何されましたか?」
「いえ。……今とても、ほっとしてるだけです」
いつでもどこでも、まずは変態と言われてきたもので……。
でも、きっちりと執事服に身を包んだ彼は、トーマが言っていたようにとても一癖も二癖もあるような風貌には見えなかった。
「こちらで立ち話もなんですから、お部屋に案内させてください。私は一応、仕事の合間になるのであまりお時間は取れませんが」
「こちらこそ、急に無理なお願いをしてしまい申し訳ありません。短い時間ですが、よろしくお願い致します」
そう言って深く頭を下げて、彼に部屋まで案内をされた。
そして客間にて――。
「おい。それでなんだって言うんだよ。俺これでも優秀な執事でやってんだけど。こんなところで仕事ほったらかしにしてたら給料下げられちゃうだろうが。どうしてくれんだトーマ」
あれ? なんかこの感じ、覚えがあるんだけど……。
「いいよって言ったのは楓さんですよ」
「あれだけ脅されたら、拒否権全くねえよ」
……彼に任せておけばいいんじゃない?
脅したら何でも情報くれそうなんだけど。
「教えてって言っても教えてくれないから、会いたい子がいるから連れて行ってもいい? って聞いただけですよ」
「だからって俺をここにいさせないようにするのはやめろ。お前が言ったら洒落になんねえよ。扱き使われる携帯さんが可哀想だろ」
脅し方えげつな……でも、それでも流石に情報はくれなかったみたい。
譲歩して、連れて来るになったんだ。……脅されるようなことになってしまったことに関しては、大変申し訳ないけれど。
「あの、すみません。お二人ってどうしてこんなに仲良しなんですか?」
「あ? ああ、アキが小さい頃から面倒見てるからな。こいつのこともよく知ってんだよ」
「そうなんですね~。あはは……」
世間って狭いなと思う、今日この頃。



