すべてはあの花のために②


「それじゃあ葵ちゃん。デートしようか」

「で。デート?」

「だって久し振りに会ったし、俺すぐ帰っちゃうし」

「わ、わたしはそれどころでは……」

「俺がいいとこ連れて行ってあげるから。……きっと君にとっても、いい情報をくれると思うよ」


 その口振りは、誰かを紹介してくれるようだった。


「まだアポ取ってないけど、きっと会ってくれると思う。……でもその人、ちょっと癖があるから、そんなにすぐは教えてくれないかもしれないんだけど。それでもよかったら俺とデート、してみない?」

「……ふふっ。はい。それなら喜んで」

「やった! ほんとに!」

「そ、そんなに喜ぶことですか?」

「だって葵ちゃん、今までデートしたことないでしょう? その初めてを俺がもら……」

「…………」

「え。あるの?」

「黙秘します」

「ちょ、葵ちゃん!?」



 この後いろいろとトーマには問い詰められたが、葵は絶対に口を割らなかったらしい。

 そうして、遅くまでしっかりバーベキューを楽しんだ翌日。キクのサプライズバースデーパーティーを実行。朝のうちに取りに行っておいた、大きなヒマワリの花を前にキクは「……オレはこんな綺麗な奴じゃねえってのに」と、少し照れくさそうにしながら受け取っていた。
 花を渡したキサはそれを見て喜んでいたが、キクに不意打ちでキスをされていたので、すぐに顔が真っ赤に。そんな状況に、今度こそ葵たちは『見て見ぬ振り』をしたのだった。