すべてはあの花のために②


「忘れがちだけど、お前まだ高校生だろ。ちょっと弾けて来いよ、あいつらみたいに」

「嫌だよ。俺がはしゃいだら読者さんビックリするでしょ」

「大丈夫。お前随分前から暴走しているから」

「それは葵ちゃんがいたらの話」

「呼びましたか?」

「お。噂をすれば、そのアオイちゃん」


 首を傾げると、トーマは「何でもないよ」と笑ってキクにどついていた。


「それはそうと、どうしたの?」

「あ。……えっと、すみませんキク先生。ちょっとだけ席を外してもらってもよろしいですか?」

「いいけど、イチャイチャすんなよ」

「え。嫌だよ。俺はしたい」

「だったらいいですさようなら」

「嘘嘘。葵ちゃん帰ってきて」

「素直にそう言えばいいんですよ」

「お前さん、こいつも操れるのか……」

「ちなみにキク先生も操れますよ?」

「おい菊。それどういう意味だよ」

「アホ。ただ単にパシリってことだよ」


「んじゃごゆっくり」と、キクはいちゃいちゃしにキサのところへと向かって行った。


「それで? どうしたの?」

「あ。……その、トーマさん。ありがとうございました」

「俺何かしたっけ?」

「海で、助けていただいたので」

「ああ。いいよいいよ。無事で何より」

「旅館にも運んでいただいたそうで。何から何まですみません」

「どういたしまして。……それで? 本当の話は何かな」


 目論見をきっと初めからわかっていたトーマに促され、葵は彼の隣に腰を下ろす。


「トーマさんは小学生までこちらにいらっしゃったんですよね。今回は、いつまで滞在予定ですか?」

「葵ちゃん、そんなに俺に帰って欲しくないの?」

「……まあ、言うなれば」

「キスしていい?」


 それについては全力で「やめてください」と拒否しておいた。


「残念。それで? どうして今回は(、、、)俺にいて欲しいのかな」

「きっと、わたしと同じだからです」

「え?」

「今回、アキラくんを助けてあげられるのが、わたしたちだけだから」

「……どういうこと」


 彼は怪訝に顔を歪める。
 だからトーマにも話をした。言い方を間違えてしまったアキラが、みんなに見て見ぬ振りをしてくれと言ったことを。


「……あいつ、そんなこと言ったの」


 今はもう大丈夫だ。ちゃんと教えてあげたから。それはもちろんみんなにも。


「ずっと、そばにいるって言ってくれましたから」


 ――……どういうことになろうとも。