すべてはあの花のために②


「できないと思ってるでしょう。いいよ別に。もうこのことに関してはアキラくんには聞かない。でももう、あんなアキラくんは見たくないからね」

「……ごめんな」

「もうっ、何で謝るかな。これはわたしが勝手にしてることだから、アキラくんが謝ることじゃないから。でも……うん、そうだな。もし君を止めることができたら、存分に褒めてくれてもいいよ!」


 そう言い切る葵に、目を丸くしたアキラはふっとおかしそうに笑った。


「ああ。じゃあ、その準備をしておかないとな」

「そうしてくれたまえ!」


 ゆっくりと体を起こしたアキラは、砂だらけになった葵の頭を楽しそうに笑いながら撫でていた。


「……ねえアキラくん。これ以上、酷くなってしまうの?」

「俺には聞かないんじゃないのか?」

「これは体調を確認しているだけなので入りません」

「ぷっ。……そうか。そうだな」


 そして彼は、やっぱり楽しそうに笑っていた。


「じゃあ、『俺に残ってる時間は少ない』とだけ言っておこうか」

「――!」

「えっ」


 アキラのその言葉に、葵が異常に反応を示す。
 慌ててアキラと距離を取るや否や、自分の体を強く強く抱き締めた。


「……あ、おい? 葵。どうしたんだ」

「……時間が、ない……」


 よくある宇宙人と交信中なのかと思ったが、震えている体に気付いたアキラは、慌ててパンッ! と手を叩いた。


「……大丈夫か」

「…………あ、うん。というか、それはこっちの台詞だから! 時間がないなら超特急でやらせてもらいますよ!」

「……ああ。期待しているよ」


 通常運転に戻った葵にほっと一安心したのも束の間。砂だらけで旅館へ帰ってきた二人は、「すぐにお風呂入ってきなさい!」とキサに怒られてしまったのだった。