「できないと思ってるでしょう。いいよ別に。もうこのことに関してはアキラくんには聞かない。でももう、あんなアキラくんは見たくないからね」
「……ごめんな」
「もうっ、何で謝るかな。これはわたしが勝手にしてることだから、アキラくんが謝ることじゃないから。でも……うん、そうだな。もし君を止めることができたら、存分に褒めてくれてもいいよ!」
そう言い切る葵に、目を丸くしたアキラはふっとおかしそうに笑った。
「ああ。じゃあ、その準備をしておかないとな」
「そうしてくれたまえ!」
ゆっくりと体を起こしたアキラは、砂だらけになった葵の頭を楽しそうに笑いながら撫でていた。
「……ねえアキラくん。これ以上、酷くなってしまうの?」
「俺には聞かないんじゃないのか?」
「これは体調を確認しているだけなので入りません」
「ぷっ。……そうか。そうだな」
そして彼は、やっぱり楽しそうに笑っていた。
「じゃあ、『俺に残ってる時間は少ない』とだけ言っておこうか」
「――!」
「えっ」
アキラのその言葉に、葵が異常に反応を示す。
慌ててアキラと距離を取るや否や、自分の体を強く強く抱き締めた。
「……あ、おい? 葵。どうしたんだ」
「……時間が、ない……」
よくある宇宙人と交信中なのかと思ったが、震えている体に気付いたアキラは、慌ててパンッ! と手を叩いた。
「……大丈夫か」
「…………あ、うん。というか、それはこっちの台詞だから! 時間がないなら超特急でやらせてもらいますよ!」
「……ああ。期待しているよ」
通常運転に戻った葵にほっと一安心したのも束の間。砂だらけで旅館へ帰ってきた二人は、「すぐにお風呂入ってきなさい!」とキサに怒られてしまったのだった。



