すべてはあの花のために②


 楽しんでデートしているところ申し訳ないがと、紀紗から菊を借りていく。


「どうした。何かあったのか」

「そう。そのまさかでね」


 わかる範囲で状況を説明すると、菊はため息を吐きながら頭を抱えた。


「悪い。まさか、そんなことになるとは思わなかった」

「しょうがねえよ。あいつら全員、下手したらそこら辺の大人よりも大人びてやがるからさ」


 同じくため息を吐いて、その時のことを話す。


「何の話をしてたのかはわからないけど、秋蘭のあの態度は異常だった」

「あいつもか」

「しょうがない。でもこれは【願い】だから、葵ちゃんにしかできないことだ」

「――! おま、どうしてそれを知って」

「何言ってんの。菊が俺に少し話したって理事長に言ったんでしょ。すぐ向こうから連絡来たよ」

「……てことは、お前は知った(、、、)のか」

「いいや。教えてもらったこと以外は」


 今回はただ、それが少しでもわかればと思って来ただけだった。それでも、本当に来てよかった。


「……お前にも背負わせて悪い」

「一番つらいのは葵ちゃんだ。理事長もつらいだろうけど、俺は絶対に彼女を救う気でいるから」

「……そうか」

「そしてあわよくば彼氏の座を手に入れる」

「お前、それ言わんかったらよかったのに」

「いいんだよ本気だから。たとえ変なフラグが立とうとも」

「そ、そうか」


 そんなことを話していると、あいつらも話し終わったのか、キサに活を入れられている。


『あっちゃんがそんな顔して欲しいと思ってるのか! ああん?!』


 ……って、言ってる気がする。
 流石は女王様。相変わらずお強いことで。

 遠目に、あいつ以外はシャキッとしたのが見える。けれど……。


「(……何考えてるんだあいつ)」


 取り敢えず海水浴は中断し、今日のところは旅館へ帰って彼女の側にいることにしたらしい。みんなは旅館の方へと歩いて行く。


「……なあ菊」

「ん?」

「あいつらも、つらいなと思ってさ」

「ああ。……でも、それも願いだ」

「わかってる」


 そう言って、俺らも旅館へ歩き出した。