すべてはあの花のために②


 ――ざぶんと、水に強く体を打ち付けた音を最後に、体が深く深く沈んでいく。


「(……アキラくん、わたしのこと嫌いになったかな)」


 ぼこっと、内側から空気の泡が出ていくのが見える。


「(……息、できないな。苦しいや……)」


 どんどんと沈んでいく中、葵はピクリとも動かなかった。
 薄れ行く意識の中、最後の気泡を見て、目蓋を下ろす。


「(……きっと。遅かれ早かれ、こんな風に……)」



 意識が完全に途切れる寸前、どこかでザブンッと大きな音がした。不思議に思い、一度だけ目蓋を押し上げると、誰かの姿が近づいてきて、手を伸ばしていた。


 けれど葵は、その手を掴むことなく、静かに意識を手放した。