そして季節はあっという間に夏になり、7月のある日。今日は久し振りに三人ずつに分かれて、藤の不良さんが暴れている原因を調査中。葵はアキラとツバサと調査をしている。
「今日は特に大丈夫そうかな?」
「そうね。いいカモもいないみたいだし」
「…………」
「……アキラくん? どうしたの?」
ここ最近、彼の様子が少しおかしい。ふとした瞬間にぼーっとしてたり、焦点が合っていなかったり。
それにはツバサももちろん気づいているようだが、それをどうこうしようとは思っていないようだ。
葵は、アキラの様子を見ながら――ぱんっと手のひらを合わせる。
「――!」
「アキラくん大丈夫?」
「……ああ。何かあったか?」
「ううん。何もないけど……大丈夫かなって」
「……? そんなにプリンが食べたかったらコンビニ寄るか?」
「ダイジョウブです。アリガトーゴザイマス」
「??」
「(まあ、大丈夫ならいいんだけどさ)」
視線を外したら、その先にはいつの間にか一人で聞き込みをしていたツバサが。どうやら、彼の言う“いいカモ”がいたようだが。
「(もうっ、何で勝手に行くの)」
慌てて彼に駆け寄ろうとすると、アキラに肩を掴まれ止められる。
「翼なら大丈夫だ。俺らがいるのをわかってるから、あいつはしっかり動けるんだ」
「……わかった」
「えらいえらい」
「ばっ、馬鹿にしてる?」
「してない。褒めてる」
そう言ってアキラは葵の頭を撫で続けた。
「……葵の髪は、さらさらだな」
「え? 少し天パ入ってるから、そんなにさらさらじゃないと思うよ? さらさらと言えば……ほら。やっぱりアキラくんの方がさらさら!」
そう言って、葵は逆に彼の頭を撫でる。彼は一瞬目を見開いたが、その後ふっと表情をやわらかくする。
「人が一生懸命危ない橋渉ってんのに……何よ。ラブラブな雰囲気出すのやめてくれる?」
「ら、ラブラブ……!?」
「すまん」
「否定しろっ」
「ただ、どっちが髪さらさらかなって触り合いっこしてただけだよ!」
「何よ。そんなのアタシが一番に決まってるじゃない」
そう言って彼は葵が触れられるようにその高い背を曲げる。
「……なんかいい匂いした」
「女の嗜みよ」
いやいや、あなた男でしょうに。
「ほらアキも。思う存分触ってもいいわよ?」
「男の髪を触る趣味はない」
「ああん?」
「んーんっ。んん……ん~~」
(※アキラは【飴を舐めて逃げる】を覚えた▼)
それはそうと、何かわかったことがあるかと尋ねてみるが、今回もやはり収穫はないそうだ。
「まったく。どこに転がってるのかしらねえ」
「まあ今日はもう遅いから帰ろう。葵、送っていく」
「あ、ありがとう……!」
その後三人で仲良く帰ったけれど、ふとした瞬間にはもうアキラはどこかぼーっとしていた。加えてツバサもツバサで何かを考え込んでいるようで、いつか二人の力になれればいいなと思いながら、葵は帰路についた。



