すべてはあの花のために②


 そして季節はあっという間に夏になり、7月のある日。今日は久し振りに三人ずつに分かれて、藤の不良さんが暴れている原因を調査中。葵はアキラとツバサと調査をしている。


「今日は特に大丈夫そうかな?」

「そうね。いいカモもいないみたいだし」

「…………」

「……アキラくん? どうしたの?」


 ここ最近、彼の様子が少しおかしい。ふとした瞬間にぼーっとしてたり、焦点が合っていなかったり。
 それにはツバサももちろん気づいているようだが、それをどうこうしようとは思っていないようだ。

 葵は、アキラの様子を見ながら――ぱんっと手のひらを合わせる。


「――!」

「アキラくん大丈夫?」

「……ああ。何かあったか?」

「ううん。何もないけど……大丈夫かなって」

「……? そんなにプリンが食べたかったらコンビニ寄るか?」

「ダイジョウブです。アリガトーゴザイマス」

「??」

「(まあ、大丈夫ならいいんだけどさ)」


 視線を外したら、その先にはいつの間にか一人で聞き込みをしていたツバサが。どうやら、彼の言う“いいカモ”がいたようだが。


「(もうっ、何で勝手に行くの)」


 慌てて彼に駆け寄ろうとすると、アキラに肩を掴まれ止められる。


「翼なら大丈夫だ。俺らがいるのをわかってるから、あいつはしっかり動けるんだ」

「……わかった」

「えらいえらい」

「ばっ、馬鹿にしてる?」

「してない。褒めてる」


 そう言ってアキラは葵の頭を撫で続けた。


「……葵の髪は、さらさらだな」

「え? 少し天パ入ってるから、そんなにさらさらじゃないと思うよ? さらさらと言えば……ほら。やっぱりアキラくんの方がさらさら!」


 そう言って、葵は逆に彼の頭を撫でる。彼は一瞬目を見開いたが、その後ふっと表情をやわらかくする。


「人が一生懸命危ない橋渉ってんのに……何よ。ラブラブな雰囲気出すのやめてくれる?」

「ら、ラブラブ……!?」

「すまん」

「否定しろっ」

「ただ、どっちが髪さらさらかなって触り合いっこしてただけだよ!」

「何よ。そんなのアタシが一番に決まってるじゃない」


 そう言って彼は葵が触れられるようにその高い背を曲げる。


「……なんかいい匂いした」

「女の嗜みよ」


 いやいや、あなた男でしょうに。


「ほらアキも。思う存分触ってもいいわよ?」

「男の髪を触る趣味はない」

「ああん?」

「んーんっ。んん……ん~~」
(※アキラは【飴を舐めて逃げる】を覚えた▼)



 それはそうと、何かわかったことがあるかと尋ねてみるが、今回もやはり収穫はないそうだ。


「まったく。どこに転がってるのかしらねえ」

「まあ今日はもう遅いから帰ろう。葵、送っていく」

「あ、ありがとう……!」


 その後三人で仲良く帰ったけれど、ふとした瞬間にはもうアキラはどこかぼーっとしていた。加えてツバサもツバサで何かを考え込んでいるようで、いつか二人の力になれればいいなと思いながら、葵は帰路についた。