「あいつのことで俺の口から君たちに言えることは何もないよ。敢えて言えることがあるとすれば」
『自分一人で』
『彼女に近づいて欲しい』
たった、それだけだ。
「申し訳ないことに俺も理事長も、このことに関して知ってはいても公言できない。だからきちんと彼女を……あいつを見ていてやって。あいつの傍に、いてあげてくれ」
これ以上のことを、君たちには伝えてあげられない。申し訳ないことに。
「シン兄」
「うん?」
「もしよかったらでいい。今、少しでも知ってる人の中で、一番多く情報を握ってるのは誰かわかるか」
アキラがそんなことを聞いてきたのでシントは呆気にとられてしまった。
「お前本当に負けず嫌いだね」
「このことに関しては絶対に誰にも負けたくないんだ」
アキラの目が本気すぎて、ツバサとアカネは驚きを隠せない。
「じゃあ聞くけど、お前はそれを知ってどうするの」
「どうもしない。ただ、俺よりも葵に近づいてる奴がいたら……なんて。ちょっと悔しいとか、そんなこと思ったり……するのかもしれない」
だんだん尻すぼみになりながら、頬をポリポリ掻いているアキラを見て、シントは「何なの?! 俺の弟マジ可愛くない?!」と吹き出して笑った。
「あ~まあ、それは一概には言えないな。俺もそこら辺はよく知らないし」
「えー」
シントはにっこり笑う。



