すべてはあの花のために②


 すると、何故かトーマがにやっと笑った。な、なんだか嫌な予感がする。


「ねえねえ。どうせならさ、何か賭けない?」

「な、……何を賭けるんでしょうか」


 葵はめちゃくちゃビビっている。でも、彼が提案したのは、「勝った方のチームは負けた方のチームに好きなものを奢ってもらう」という、至って普通のもの。


「それと、負けた方のチームは向こうの洞窟に行ってなんか取ってくる」


 と続けた彼が指差したのは、如何にも悪鬼が出てきそうな洞窟だった。


「な、なあ。まじであそこに行かないとダメ?」

「あれ? チカ怖いんだ」

「ばっ! ちげーよ! ただあそこ、マジで出る(、、)って有名で……」


 そんなことを全く信じていない葵とトーマは平気な顔をしているが……何故だろう。他のみんなの顔色は少し悪い気がした。


「そして! 勝ったチームの得点王には、葵ちゃんの時間をもらう!」


 おっと。まだトーマの話は終わってないようだった。

 いやいや、どうだ! って顔してますけど、そんなのでみんなやる気になるわけ――……って、あれ? どうしてみんな、やる気満々で腕捲りし始めたの?


「で、でもそれだったら、わたしにメリットがないんですけど」

「こんなイケメンと一緒にいられて嬉しいでしょ」


 勝つ気満々じゃないこの人……。


「でも、そうだな。もし葵ちゃんが得点王になったら、誰かを逆指名できるって言うのはどう?」

「乗ります」


 葵の即答にみんなは驚いていたけれど、どうやらオウリだけは何となく気づいたらしい。



「ええっ!? アオイちゃんの時間がもらえるなら、俺もビーチバレー参加すればよかった!!」


 後日、ナンパばかりしていて後悔した人がいたらしいけど……ま、それはさておき。
 いよいよ、ただの遊びなのに白熱した戦いが始まります。