すると、何故かトーマがにやっと笑った。な、なんだか嫌な予感がする。
「ねえねえ。どうせならさ、何か賭けない?」
「な、……何を賭けるんでしょうか」
葵はめちゃくちゃビビっている。でも、彼が提案したのは、「勝った方のチームは負けた方のチームに好きなものを奢ってもらう」という、至って普通のもの。
「それと、負けた方のチームは向こうの洞窟に行ってなんか取ってくる」
と続けた彼が指差したのは、如何にも悪鬼が出てきそうな洞窟だった。
「な、なあ。まじであそこに行かないとダメ?」
「あれ? チカ怖いんだ」
「ばっ! ちげーよ! ただあそこ、マジで出るって有名で……」
そんなことを全く信じていない葵とトーマは平気な顔をしているが……何故だろう。他のみんなの顔色は少し悪い気がした。
「そして! 勝ったチームの得点王には、葵ちゃんの時間をもらう!」
おっと。まだトーマの話は終わってないようだった。
いやいや、どうだ! って顔してますけど、そんなのでみんなやる気になるわけ――……って、あれ? どうしてみんな、やる気満々で腕捲りし始めたの?
「で、でもそれだったら、わたしにメリットがないんですけど」
「こんなイケメンと一緒にいられて嬉しいでしょ」
勝つ気満々じゃないこの人……。
「でも、そうだな。もし葵ちゃんが得点王になったら、誰かを逆指名できるって言うのはどう?」
「乗ります」
葵の即答にみんなは驚いていたけれど、どうやらオウリだけは何となく気づいたらしい。
「ええっ!? アオイちゃんの時間がもらえるなら、俺もビーチバレー参加すればよかった!!」
後日、ナンパばかりしていて後悔した人がいたらしいけど……ま、それはさておき。
いよいよ、ただの遊びなのに白熱した戦いが始まります。



