「と、取り敢えずもう顔落としてくる!」と、葵は洗面所へ駆けていった。
「それでえ? かなチャンは、ちゃんと心の準備してたのかなあ?」
アカネが意地悪く聞く。
「してるわけないじゃん。てかあんなの無理だから」
「……何の話?」
「つばさクン。このナヨナヨ男どうにかしてくれない?」
「俺はナヨナヨしてない!」
「カーテン越しで言われてもねえ……」
「――はっ!」
そう言われてようやく、カーテンをぐるぐるしていたことに気づく。
「な、何しに来たの」
「いえね、どうせならみんなで一緒に帰ろうってあの子が」
ツバサは洗面所へ駆けていった葵を指差す。
「か、帰れない」
「あら。帰らないじゃないのね」
「うん。だから、みんなで帰って」
「かなチャン……」
カーテンから出ようとしたけれど、葵がこちらへ戻る気配がしたので再び逆戻り。帰ってきた葵は、どうやら湿布も新しいものに換えたらしい。
「あれ? カナデくんがいない……」
「(いるのよ一応……)」
「(お願いだから見つけてあげてえ!)」
ぐるっと見回して、ようやくカーテンに隠れるカナデを見つけた。
「(ねえ。これどうしたの?)」
「(……さあ?)」
「(あおいチャン一発殴ってくれない?)」
三人は目でそう会話する。
その頃、生徒会室では…………。
「はっ! 葵がいない!」
一緒に帰るはずの、真面目に授業を受けていたアキラが一人慌てていた。



