すべてはあの花のために②


「と、取り敢えずもう顔落としてくる!」と、葵は洗面所へ駆けていった。


「それでえ? かなチャンは、ちゃんと心の準備してたのかなあ?」


 アカネが意地悪く聞く。


「してるわけないじゃん。てかあんなの無理だから」

「……何の話?」

「つばさクン。このナヨナヨ男どうにかしてくれない?」

「俺はナヨナヨしてない!」

「カーテン越しで言われてもねえ……」

「――はっ!」


 そう言われてようやく、カーテンをぐるぐるしていたことに気づく。


「な、何しに来たの」

「いえね、どうせならみんなで一緒に帰ろうってあの子が」


 ツバサは洗面所へ駆けていった葵を指差す。


「か、帰れない」

「あら。帰らない(、、、、)じゃないのね」

「うん。だから、みんなで帰って」

「かなチャン……」


 カーテンから出ようとしたけれど、葵がこちらへ戻る気配がしたので再び逆戻り。帰ってきた葵は、どうやら湿布も新しいものに換えたらしい。


「あれ? カナデくんがいない……」

「(いるのよ一応……)」

「(お願いだから見つけてあげてえ!)」


 ぐるっと見回して、ようやくカーテンに隠れるカナデを見つけた。


「(ねえ。これどうしたの?)」

「(……さあ?)」

「(あおいチャン一発殴ってくれない?)」


 三人は目でそう会話する。



 その頃、生徒会室では…………。


「はっ! 葵がいない!」


 一緒に帰るはずの、真面目に授業を受けていたアキラが一人慌てていた。