すべてはあの花のために②


「はあ。はあ。はあ。……やってしまった」

「喋っちゃったもんねー?」

「~♪(こくこく)」

「それで? なんで無言でトランプしてんの。動き怪しかったんだけど」

「喋ったら罰ゲームにして、みんなでダウトしてたの!」

「そうなんだ~。結構楽しかったね?」

「(こくこく!)」

「(それ絶対オウリ勝つじゃん……)」

「あ! 次はヒナタくんだねー」

「じゃあねあっちゃん! また落ち着いたら一緒に帰ろうねー!」

「(手を振る~)~♪」

「うん! じゃあね~」


 キサとオウリは生徒会室を出て行った。


「(ああ~。わたしの癒やしがあああ~……)」


 軽くショックを受けていると。


「じゃ。オレのことは気にしないで、好きなことしてていいから」


 そう言って彼はソファーに座ってスマホをいじり出す。


「ええ?! なんかして遊ぼうよ! ……そうだ! 一緒にマ○カ――」

「理事長に捕まったからしばらくしたくない」

「そ、それは。大変だったね……?」

「うん、つらかった」

「あ! じゃあさ、スマ○ラは?」

「しない。したかったら一人でどうぞ」

「一人でCPと戦うほど虚しいものはないよう」

「じゃあ違うことするんだね」


 そう言って彼は、本格的にスマホを触りだしてしまった。


「……ヒナタくんは何してるの?」

「何でもよくない?」

「えー気になる!」

「なんで」

「え? ……なんでだろ?」

「じゃあ気のせいだね」

「そっか気のせい――はっ!」


 ヒナタに上手く誘導されてしまう葵である。
 仕方ないから、さっきのトランプを使ってピラミッドを作ることにした。


「(実は、これでも手先は器用だったりするんですー)」


 葵はどんどん積み上げていった。そしてとうとう――――。


「! 出来た! 見て見てヒナタく――」


 すべてのトランプを使い切り、大きなピラミッドを完成させた、それは直後のこと。


「ふーっ」

「あああああああ‼︎」


 ヒナタに吹き飛ばされてしまった。


「何すんだあー!」

「人が一生懸命作ったもの壊すのって楽しいよね」

「せっかく作ったのにい……ぐすん」

「得意なの?」

「ん? うんっ。結構上手に出来てたでしょー」

「うん。そうだね」

「(あれ。普通に褒められた)」

「それで? 他に得意なことは?」

「え? 他?」

「うん」

「柔道とか合気道とか……?」

「うん」

「空手とかプロレスとか?」

「そっち系以外ないの」

「え? うーん、そうだなあ。基本は何でもできるよ?」

「じゃあ何するのが一番好き?」

「なんだろう……最近は、みんなの小さい頃の写真集めるのが好きかな?」

「え。そんなことしてんの」

「うん実はねー? みんな可愛いんだもんっ」

「オレのも持ってるわけじゃないよね」

「もちろん!」

「(ほっ)」

「大事にとってあるよ!」

「今すぐ捨てろ」

「いっ、嫌だよ! わたしの宝物なんだ!」

「意味わかんないから」

「これだけは絶対に譲れないね!」

「……はあ。じゃあ持っててもいいよ」

「(あれ? 意外にあっさり……?)」


 そう思っていたら。


「その代わり、オレにもあんたの小さい頃の写真頂戴」

「……え。ヒナタくん、ロリコン――」

「違う」


 なんだ、違うのか。それもそれで面白いんだけどな~。


「じゃあいい」

「あれ? いいの?」

「その代わり、あんたの話して」

「話?」

「小さい頃の話とか、ここに来る前どこにいたかとか。どうして迎えにきてもらえないのかとか」

「それは……」

「オレ、あんたのこと知らないから」

「それはお互い様」

「オレはいいの」

「なんで⁉︎」

「写真持ってないから」

「え……」

「話せないなら写真返せ」

「(……くっ。なんて卑怯な……)」

「ねえ、なんで話せないの。あんたのこと、何もわからないんだけど」

「(……そんなこと、言われたって……)」

「じゃあここで【悪戯する権利】を使う」

「ええっ⁉︎ ちょっ!」


 そう言ってヒナタは葵のスカートの中に手を入れ、そっと脚を撫でてくる。


「ねえ。教えて?」

「だ、だめっ……!」


 葵は必死で押し返そうとするが、如何せんこういうことになると上手く力が入らない。
 そうこうしているうちに今度は、こてんと葵の胸の上に頭を寄せてくる。


「ねえ、教えてよ」

「だっ。……だめ! ぜったい‼︎」


 徐々に中の手が上に上がってくる。


「……っ、ねえ。お願い、だから……」

「え。……ヒナタ、くん……?」


 胸に顔を埋められて表情こそ見えないが、切なげな声に、苦しくなる。


「……ヒナタくん、どうし」

「このままやっちゃうのもありだけど」

「‼︎」


 いつの間にか、もう一つの手が背中のホックへと進んでいた。


「ひ、ひなたくんっ。ほんと、やめ……っ」

「……こんなになっても、言えないのか」


 ハッキリとは聞こえない声で何かを呟きながら、彼はすっと、葵から離れていった。


<監視 その5>
 ヒナタの場合
(※尋問されながら襲われる)