すべてはあの花のために②


<アキラの場合>


「それじゃあね、チカくーん」

「もうお前とはプロレスは見ねえっ!」


「オレの扱い酷いっ!」――ガチャンッと大きな音を立ててチカゼは出て行った。それに葵とアキラは、揃えて首を傾げたのだった。


「アキラくんよろしくねー!」

「ああ。傷はどうだ。まだ痛むか?」

「少し青くなってるだけだから、前ほど酷くないよ」

「見る分には痛々しい」

「じゃあ見なかったらいいよ~」


 そう言って葵はアキラの目を塞ぐ。


「それは嫌だ」

「なんで?」

「葵が見られない」

「……アキラくんも気持ち悪くなってる」

「え(がーん)」

「うそうそ」


 そう言って葵はアキラの目から手を外し、頭を撫でてやる。するとアキラは、気持ちよさそうに目を閉じた。


「……アキラくんも眠い?」

「ん? も?」

「さっきチカくん、眠そうだったから、技掛けて起こしてあげてたの」

「あ、ああ。そうだったのか(どんまい千風)」

「もしかして、遅くまで見回りしてる?」

「もう見回りはしないって言っただろ?」

「嘘。してるでしょう。だからアキラくんも眠そうなんだ」

「そんなことはない。これはまだ後遺症のせい」

「もうそれは通用しないんだけど」

「ほら見ろ。こんなところに飴ちゃんが」

「あー! アキラくんまだこんなおっきい飴ちゃん持ってる!」

「しょうがない。こればっかりは本当に好きになったからな」


 そう言って、また自分の顔ぐらいある飴を口の中に入れる。


「ダメじゃない! また糖尿病教室しなきゃ!」

「ん~ん」

「いや、わかんないんだけど……」

「ん。んーん! んっ。ん~」

「ダメーわかりませーん。なのでまた今から教室を開きまーす。ノートを開いてくださーい」