<アキラの場合>
「それじゃあね、チカくーん」
「もうお前とはプロレスは見ねえっ!」
「オレの扱い酷いっ!」――ガチャンッと大きな音を立ててチカゼは出て行った。それに葵とアキラは、揃えて首を傾げたのだった。
「アキラくんよろしくねー!」
「ああ。傷はどうだ。まだ痛むか?」
「少し青くなってるだけだから、前ほど酷くないよ」
「見る分には痛々しい」
「じゃあ見なかったらいいよ~」
そう言って葵はアキラの目を塞ぐ。
「それは嫌だ」
「なんで?」
「葵が見られない」
「……アキラくんも気持ち悪くなってる」
「え(がーん)」
「うそうそ」
そう言って葵はアキラの目から手を外し、頭を撫でてやる。するとアキラは、気持ちよさそうに目を閉じた。
「……アキラくんも眠い?」
「ん? も?」
「さっきチカくん、眠そうだったから、技掛けて起こしてあげてたの」
「あ、ああ。そうだったのか(どんまい千風)」
「もしかして、遅くまで見回りしてる?」
「もう見回りはしないって言っただろ?」
「嘘。してるでしょう。だからアキラくんも眠そうなんだ」
「そんなことはない。これはまだ後遺症のせい」
「もうそれは通用しないんだけど」
「ほら見ろ。こんなところに飴ちゃんが」
「あー! アキラくんまだこんなおっきい飴ちゃん持ってる!」
「しょうがない。こればっかりは本当に好きになったからな」
そう言って、また自分の顔ぐらいある飴を口の中に入れる。
「ダメじゃない! また糖尿病教室しなきゃ!」
「ん~ん」
「いや、わかんないんだけど……」
「ん。んーん! んっ。ん~」
「ダメーわかりませーん。なのでまた今から教室を開きまーす。ノートを開いてくださーい」



