すべてはあの花のために②


「……それで? どうしてここまでなったの」


 シントは葵の部屋で手当てをしながら、ここまでの経緯を教えてもらっていた。


「体育祭の時に絡まれたって言ったでしょう?」

「葵が最後挑発したやつね」

「その挑発通り、今度は手加減無しで来られた」

「それで、無理しすぎたわけ?」

「うんそうだね。流石に今日は……無理したかも」

「はあ。どうしてこうも無茶するの」

「それは……願いだから。だからわたしは無理するよ。シントには申し訳ないけど」


 葵はシントの目をしっかり見つめ返す。


「どう言っても無理なんだろうけど。でもなるべくは気をつけて。いい?」

「ん。努力する」


 シントは大きなため息をついて頬と左肩に湿布を貼る。


「骨まではいってないね。でも左腕は吊っておいた方がいいかも」

「うん。そうしとく」

「……髪、短くなっちゃったね」


 シントは、葵のぼさぼさになった毛先に触れる。


「へへ。やってしまったよ」

「はあ。本当、一気に短く(、、)なるんじゃない?」

「そうだね。きっと、そうなってしまうと思う」


 それでも――……と、言外に含んだ葵の気持ちを、シントはすべて受け止めることにした。


「取り敢えず整えよう」

「うんっ。可愛くしてね?」

「十分可愛いから。これ以上は無理」

「ええっ?!」

「すぐ赤くなんないでよ。夜ベッドの中で襲いたくなるんだけど」

「解雇します」

「やめておきます」


 その後、葵の胸元まであった髪は、肩上ふんわりボブに早変わりしたのだった。