「取り敢えず、帰りましょうお嬢様」
「で、でも。警察に。事情を……」
「彼に任せておけば大丈夫でしょう」
シントは横目でボロボロのチカゼを捕らえる。
「え。……見て、たの……?」
「いいえ。ついさっき来たばっかりですよ。遅いので様子を見に来てみれば……何やらいい雰囲気だったので、入れなかっただけです」
「いやいや。いたなら声かけてよー……」
力の入らない葵の声に、シントは大きなため息を落とす。
「ねえいい加減にしてくれない? 今何時だと思ってんの。またお前携帯さんに失礼なことしただろ。ちゃんと連絡してこないから、今日こそはと思って来てみれば……何これッ!」
「流石に今日は連絡できないよう……」
「しかも俺もなんか知んないけど、こいつらの前でオープンになってんだけど! どうしてくれるわけ! 普通はまだシークレットポジションじゃないの?!」
「自分でさらけ出してんじゃんかよう……」
「誰のせいだと思ってんの!?」
「え? しん――」
「うるさい! ちょっと黙って!」
「………………」
「ほ、ほんとに黙んないでよ。寂しいじゃん。みんな目が点なんだから」
「それは自業自得。さっさと改めて自己紹介でも何でもすればいいじゃん」
ごもっともな意見に再び大きなため息を落としながら、シントは葵の体を抱え上げながら一礼をする。
「申し遅れました。私は今は、このクソ強お嬢様の専属のお守りをしております、シントと申します」
葵がペシッと叩き、「そうじゃないでしょうが。恥ずかしいんかこら」と言うとみんなはもっと目が点になった。
「えー。今ここで言うのー」
「本性出しておいて、どうしてやめるんだ。お兄ちゃんや」
今までずっと堪えていたのか、『お兄ちゃん』にピクリとシントとアキラが動く。
ようやく決心がついたのか、目を点にしているみんなの目をもう一度ゆっくりと見渡したシントは、少し照れ混じりに自己紹介をした。
「あれ以来会ってないから覚えてないかも知れないけど……どうも。いつもアキと仲良くしてくれてありがとう。今はわけあって葵の専属執事をしています。アキの兄の信人です」



