すべてはあの花のために②


 お互いの気持ちが落ち着いた頃、気絶しているキサの元へ行こうとした時だった。


「――葵?」

「何、これ……」

「一体、何があったのよ」


 同じく見回りをしていたアキラと九条兄弟が、この惨状に目を見開いて固まっていた。
 それも束の間、ツバサが慌ててこちらへと駆け寄ってくる。


「どうしたの!」

「――! ……~~っ」


 肩を揺さぶられ、葵は痛む声すら出せないまま蹲る。


「――! アンタ怪我して……」

「取り敢えず警察呼べ! それから近くの病院連れて行く!」


 チカゼは蹲る葵の体を支え、三人に叫んだ。


「日向」

「もうやってる。警察の方……あ、もしもし――」

「あ、アタシは救急車を」

「その必要はありません」


 慌てたツバサの言葉を遮るように通った誰かの声で、その場に一瞬静寂が走る。
 発信源は、街灯の陰。そこからすっと、黒い人影が現れた。


「お嬢様、立てますか」

「……っ、し。んと……?」


 そして気付いたときには、そう言って葵の前にしゃがみ込んでいた。

 アキラはというと、まさかここでまた会うとは思っていなかったので驚きを隠せない。どこかで聞いたことがあるような名前に、ツバサが首を傾げている。
 ちょうどその時キサが目を覚まし、体を支えていたヒナタは、彼女の体をそっと起こしていた。


「キサ。大丈夫?」

「日向? ……――! あいつらは!?」


 キサは慌てて辺りを見渡す。
 その声に全員が振り返る。何故なら先程の惨劇が嘘のように、そこはもぬけの殻になっていたのだ。