「さっき『おれら』って言ってたね。てことは、みんなアキラくんがどうしてこうなってることは知ってるの?」
彼はこくんと頷くが〈全部じゃないけど〉と文字で示す。
「それを知っていたから、止めようとしたけどアキラくんがそれを拒否したんだね」
彼は申し訳なさそうに頷いた。
「どうしてみんなはそこで止めちゃったのかな。どうして、もう少し彼を説得できなかったのかな」
尋ねると、彼はこう答えた。
〈あっくんが 泣いたから〉と。
あっくん、おれらといる時は全然泣いたことなんかなかったんだ。でも……何回も説得するうちに泣いちゃって。
あっくんが泣いてるのなんて初めて見たから、みんな動揺しちゃって。本当に、何かわけがあるんだと思って。
〈だからそれ以上聞けなかった 説得もできなかったんだ〉
確かに彼はそこまで感情豊かな方でないし、無口ではないが口数が多い方ではない。
そんな彼が目の前で泣き出したとなったら、動揺もしてしまうのも無理ないだろう。ずっと一緒にいたのなら尚のこと。
「そっか。そこでわたしの出番というわけだね」
みんなと関わってきた時間が少ない分、動揺なく踏み込んでいけると思ってくれたのだろう。
けれど彼は、葵の心情を知ってか、緩く首を振って文字を書いた。
〈あーちゃんなら 助けられると思ったから〉
「(ふふ。そう言われた方が何倍も嬉しい)」
きっと顔色を窺ったのだろう。
だからわざわざ、言い方を変えてくれたんだ。
「(わたしの周りは、やさし過ぎる人でいっぱいだね)」
葵が「ありがとう」と素直に伝えると、彼はにっこり微笑んでくれた。



