すべてはあの花のために②


 葵はナイフを握るその手を掴み、そのまま自ら後頭部へ持って行って、髪を切り落とした。動揺している隙を突き、その腕を上から下へ捻り落として、体ごと地面へと叩きつける。

 その後、そいつの鳩尾へ一発拳を落とし、動けなくなったのを見届けてから残りの男たちのところへ。柔道や空手や合気道、時にプロレス技を巧みに使いこなし、葵は金属の棒などものともせず薙ぎ倒していく。

 そうして誰もビクともしなくなって、葵はようやく息をついた。ボロボロのチカゼは、駆け寄ってくる葵の様子を、涙でぼやけた瞳で見上げていた。


「……あ、おい……?」


 不安げな声で名を呼ばれる。
 座り込んでいる彼の前に膝をつき、頭を抱え込むように抱き締めた。


「ちかくん」

「! ……。ん」


 返ってくるのは、今にも泣き出しそうな声。



「もう。……さみしく、ないよ」

「――! ……っ。んっ」

「ちゃんとね。みてる、から」

「……あおい」

「ん?」

「オレの名前。……叫んでくれて。ありがと」

「……まきこんで。ごめんね」


 それに小さな否定が返ってきて、二人は体を抱き締め合った。
 お互いの不安を、埋め合うように。