葵はナイフを握るその手を掴み、そのまま自ら後頭部へ持って行って、髪を切り落とした。動揺している隙を突き、その腕を上から下へ捻り落として、体ごと地面へと叩きつける。
その後、そいつの鳩尾へ一発拳を落とし、動けなくなったのを見届けてから残りの男たちのところへ。柔道や空手や合気道、時にプロレス技を巧みに使いこなし、葵は金属の棒などものともせず薙ぎ倒していく。
そうして誰もビクともしなくなって、葵はようやく息をついた。ボロボロのチカゼは、駆け寄ってくる葵の様子を、涙でぼやけた瞳で見上げていた。
「……あ、おい……?」
不安げな声で名を呼ばれる。
座り込んでいる彼の前に膝をつき、頭を抱え込むように抱き締めた。
「ちかくん」
「! ……。ん」
返ってくるのは、今にも泣き出しそうな声。
「もう。……さみしく、ないよ」
「――! ……っ。んっ」
「ちゃんとね。みてる、から」
「……あおい」
「ん?」
「オレの名前。……叫んでくれて。ありがと」
「……まきこんで。ごめんね」
それに小さな否定が返ってきて、二人は体を抱き締め合った。
お互いの不安を、埋め合うように。



