すべてはあの花のために②


 男たちは、あっさりキサを解放した。雑に放り投げられたところを、なんとかボロボロのチカゼが受け止めてくれる。


「(先生に怒られるかな、これは。でもなんとか、二人は無事だ)」


 安堵の息を吐いていると、髪の毛掴み上げられた葵は、雑に引っ張り起こされる。


「これであいつらの敵は十分取れたやろ。なあお嬢ちゃん」


 男は葵の首元にナイフを突きつけた。


「少し大人しくしとってな。あんたを連れて来いって、うるさい人がおんねん」

「……ころさ、ないんですか」

「初めはそのつもりやったんやけど……自分でヤるいうて、大層ご立腹でな」


 人の恨みを買うほどのことをした覚えは……。


「(わたし(、、、)には、ないんだけど)」

「――放せよ」


 ボロボロのチカゼが、ゆっくりと立ち上がる。


「(……ちか、くん……?)」


 瞳は怒りに狂い、葵など見てはいない。
 彼の目に映るのはただの……――獲物だけだ。



「お~いチビ助、やめとき。力の差は歴然。俺らはもう目的果たしたし、戦うつもりないねん」


 男は葵の首元にナイフをぴたりとつける。けれどチカゼは止まらなかった。


「……止まりぃ。でないとお嬢ちゃんここで死ぬで」


 ようやく彼は歩みを止める。けれど。


「放せっつってんだ」


 チカゼの目は怒り狂っていた。初めは、そう見えた。けれど。


「はなせっつってんだろうがあッ!!」


 彼の目には、涙が溜まっていた。
 それは、怒りから来るようなものなんかじゃない。

 チカゼはナイフなんか関係ないと、こちらへ一気に駆けてくる。