男たちは、あっさりキサを解放した。雑に放り投げられたところを、なんとかボロボロのチカゼが受け止めてくれる。
「(先生に怒られるかな、これは。でもなんとか、二人は無事だ)」
安堵の息を吐いていると、髪の毛掴み上げられた葵は、雑に引っ張り起こされる。
「これであいつらの敵は十分取れたやろ。なあお嬢ちゃん」
男は葵の首元にナイフを突きつけた。
「少し大人しくしとってな。あんたを連れて来いって、うるさい人がおんねん」
「……ころさ、ないんですか」
「初めはそのつもりやったんやけど……自分でヤるいうて、大層ご立腹でな」
人の恨みを買うほどのことをした覚えは……。
「(わたしには、ないんだけど)」
「――放せよ」
ボロボロのチカゼが、ゆっくりと立ち上がる。
「(……ちか、くん……?)」
瞳は怒りに狂い、葵など見てはいない。
彼の目に映るのはただの……――獲物だけだ。
「お~いチビ助、やめとき。力の差は歴然。俺らはもう目的果たしたし、戦うつもりないねん」
男は葵の首元にナイフをぴたりとつける。けれどチカゼは止まらなかった。
「……止まりぃ。でないとお嬢ちゃんここで死ぬで」
ようやく彼は歩みを止める。けれど。
「放せっつってんだ」
チカゼの目は怒り狂っていた。初めは、そう見えた。けれど。
「はなせっつってんだろうがあッ!!」
彼の目には、涙が溜まっていた。
それは、怒りから来るようなものなんかじゃない。
チカゼはナイフなんか関係ないと、こちらへ一気に駆けてくる。



