葵は彼らの攻撃を避けながら、隙間を縫ってキサのところへ。チカゼは大男四人、葵は二人と向き合った。
「彼女を放していただいてもよろしいでしょうか」
「それはお嬢ちゃん次第やな」
関西訛りの男の側に控えていた一人が、葵に攻撃を仕掛けてくる。
「(えっ。……襟を、取ろうとしている……?)」
既視感のある攻撃を仕掛けてくる男は、どうやら柔道に長けているよう。横目でチカゼの方も確認すると、やはり向こうもそんな人ばかりだった。
「(ッ、てことは恐らく空手もだ……っ!)」
葵は攻撃を避けながらも、隙がないのでてこずっていた。
それだけではない。すっかり冷たくなった指先には力が入らず、体が重たくて上手く動かない。
それこそ本当に、海の中でもがいているような――……。
「やっぱりお嬢ちゃん、ただもんやないなあ」
下手くそすぎる口笛に、思わずハッと嘲笑を漏らした。
「あなた方の依頼主は、直接わたしのところへは来ないんですね」
「アホか。その依頼主は俺や。誰がこいつら動かしとる思うとんねん」
動きにくい体に多少の焦りを感じながら、葵は再び嘲り笑う。
「それはないです、ね。あなたはっ、依頼主じゃ……ないっ!」
葵は向き合っていた男の奥襟を取り、できるだけ遠くへ巴投げをした。
「……さあ、次はあなたの番です。その子を放して、わたしと勝負しなさい」
「……ふ」
思わず出た、乾いた笑いを皮切りに大きな声で笑い出す。
「お前ら、使ってもええで」
この男のその言葉を聞いた他の奴らは、懐から伸び縮みする金属の棒を取り出した。
「――っ、ち、チカくん!」
「こっちはいいから! 早くキサを!」
遣り取りの間に、男は一気に距離を縮めてきた。拳に蹴り、隙なく出される攻撃に、重い体でなんとかスレスレを逃げる。このままじゃ、攻撃が当たるのも時間の問題だ。



