すべてはあの花のために②


 葵は彼らの攻撃を避けながら、隙間を縫ってキサのところへ。チカゼは大男四人、葵は二人と向き合った。


「彼女を放していただいてもよろしいでしょうか」

「それはお嬢ちゃん次第やな」


 関西訛りの男の側に控えていた一人が、葵に攻撃を仕掛けてくる。


「(えっ。……襟を、取ろうとしている……?)」


 既視感のある攻撃を仕掛けてくる男は、どうやら柔道に長けているよう。横目でチカゼの方も確認すると、やはり向こうもそんな人ばかりだった。


「(ッ、てことは恐らく空手もだ……っ!)」


 葵は攻撃を避けながらも、隙がないのでてこずっていた。
 それだけではない。すっかり冷たくなった指先には力が入らず、体が重たくて上手く動かない。

 それこそ本当に、海の中でもがいているような――……。


「やっぱりお嬢ちゃん、ただもんやないなあ」


 下手くそすぎる口笛に、思わずハッと嘲笑を漏らした。


「あなた方の依頼主は、直接わたしのところへは来ないんですね」

「アホか。その依頼主は俺や。誰がこいつら動かしとる思うとんねん」


 動きにくい体に多少の焦りを感じながら、葵は再び嘲り笑う。


「それはないです、ね。あなたはっ、依頼主じゃ……ないっ!」


 葵は向き合っていた男の奥襟を取り、できるだけ遠くへ巴投げをした。


「……さあ、次はあなたの番です。その子を放して、わたしと勝負しなさい」

「……ふ」


 思わず出た、乾いた笑いを皮切りに大きな声で笑い出す。


「お前ら、使ってもええで」


 この男のその言葉を聞いた他の奴らは、懐から伸び縮みする金属の棒を取り出した。


「――っ、ち、チカくん!」

「こっちはいいから! 早くキサを!」


 遣り取りの間に、男は一気に距離を縮めてきた。拳に蹴り、隙なく出される攻撃に、重い体でなんとかスレスレを逃げる。このままじゃ、攻撃が当たるのも時間の問題だ。