すべてはあの花のために②


 二人の姿が小さくなって、振り続けていた手をゆっくりと下す。


「……あおいチャンもだけど、おれはかなチャンのことも心配してんだよ」

「あかね。二人は帰ったのかい?」

「うん父さん。今帰ったとこ」

「あら。そうなのー残念。今度絶対また家に呼んでね?」

「はいはい。わかったよ、母さん」

「……にしても」

「ん? なあに、おじいちゃん」


 険しい顔をして、何を言うのかと思えば。


「あかねはあの子にホの字なのか」

「なああ!?」

「まあ見ててわかるよねー」

「ここまで本気なのは初めてなんじゃない?」

「あの子なら将来安泰だ」

「やめてよおおおー……っ!」


 二宮家のわだかまりはすっかり無くなったものの、逆にちょっと気まずくなったアカネであった。





「ちょっ、カナデくんお願いっ! 本当に降ろしてってばっ!」


 さっきからポカポカとカナデの頭を殴ってはみるが、彼は全然降ろそうとしてくれなかった。


「わたし歩けるから。だから」

「さっきすっごい冷たかった」


 あ。やっと喋った。


「何で本当のこと言わないの」

「本当だもん」

「それを正直に俺に言ってくれたら、降ろしてあげてもいいよ」


 葵はそれに答えず、ただ彼の後頭部にこつんと頭を置いた。


「言えないんじゃん」

「……」

「いいよ、わかった」


 葵は何も話さなかった。道明寺に着いても、葵は目線を合わせなかった。
 そんな葵にもカナデは何も言わず、ただ背を向けて帰って行く。


「――――……ばいばい。アオイちゃん」


 遠く離れたところで、そう呟きながら。