二人の姿が小さくなって、振り続けていた手をゆっくりと下す。
「……あおいチャンもだけど、おれはかなチャンのことも心配してんだよ」
「あかね。二人は帰ったのかい?」
「うん父さん。今帰ったとこ」
「あら。そうなのー残念。今度絶対また家に呼んでね?」
「はいはい。わかったよ、母さん」
「……にしても」
「ん? なあに、おじいちゃん」
険しい顔をして、何を言うのかと思えば。
「あかねはあの子にホの字なのか」
「なああ!?」
「まあ見ててわかるよねー」
「ここまで本気なのは初めてなんじゃない?」
「あの子なら将来安泰だ」
「やめてよおおおー……っ!」
二宮家のわだかまりはすっかり無くなったものの、逆にちょっと気まずくなったアカネであった。
「ちょっ、カナデくんお願いっ! 本当に降ろしてってばっ!」
さっきからポカポカとカナデの頭を殴ってはみるが、彼は全然降ろそうとしてくれなかった。
「わたし歩けるから。だから」
「さっきすっごい冷たかった」
あ。やっと喋った。
「何で本当のこと言わないの」
「本当だもん」
「それを正直に俺に言ってくれたら、降ろしてあげてもいいよ」
葵はそれに答えず、ただ彼の後頭部にこつんと頭を置いた。
「言えないんじゃん」
「……」
「いいよ、わかった」
葵は何も話さなかった。道明寺に着いても、葵は目線を合わせなかった。
そんな葵にもカナデは何も言わず、ただ背を向けて帰って行く。
「――――……ばいばい。アオイちゃん」
遠く離れたところで、そう呟きながら。



