すべてはあの花のために②


 なんだか温かいなあと思って目を開けると、目の前に至近距離のカナデの顔があったので、取り敢えず拳をめり込ませておいた。


「ひどい! この美形になんてことを!」

「あれ? わたしどうしてお布団で寝てるの?」


「無視ですか! そうですか! まあいいですけど!」と、拗ねているカナデはさておき。


「アオイちゃん、シャワー室で倒れたんだよ。覚えてない?」

「シャワー室?」


 カナデを殴った音で気づいたのか、みんなが心配そうにこちらへとやってくる。


「あおいサン、大丈夫?」

「お嬢ちゃん、どっかぶつけてないか」

「あおいチャン。もう寒くない……?」


 ……寒い? どういうこと?


「あなた、道着着まま冷水を浴びたりして、何してたの」


 きっと一番に助けてくれたのだろうナズナが、そう聞いてくる。


「え? 冷水…………あ。ああ、体がちょっと、運動したせいで火照っていたので、冷まそうかと思って!」


 慌てて理由を並べる葵に、ナズナが視線を合わせてくる。


「どんどん冷たくなっていったから心配したわ」

「す、すみませんお騒がせしてしまって……」


 改めて、葵はしっかり姿勢を正す。


「心配していただいて、ありがとうございます」


 流石に今回ばかりはと、頭は下げておいた。まあ大丈夫なら……と、大人たちは顔を見合わせていたけれど、すでに隠し事をしているのを知っているアカネとカナデだけは、顔が険しいまま。素直に信じてはくれそうになかった。