すべてはあの花のために②


「あおいちゃん! ……っ、あおいちゃん!!」


 ナズナが何度も葵の頬を叩くが、一切返事はない。
 そして、未だザーザーとシャワーから流れ続けているのは冷水。道着を着たまま、彼女は何故冷たいシャワーを浴びていたのか。

 脈はある。息もしている。熱があるわけでもない。
 ただ彼女の唇は紫色で、指先は凍っているのではないかと思うほど冷たくなっていた。


「……っ、取り敢えず温めるわよ! お布団敷いて! 暖房入れて! 湯たんぽと電気毛布の準備! 早く!!」


 ナズナの指示を受けたみんなは、一斉に道場の中を温め始める。布団を敷いて着替えさせた彼女をそこへ寝かせてあげるが、つらそうな息を吐くだけで呼びかけには答えられそうにない。
 しばらくしたらようやく落ち着いたのか。唇の色は戻り、指先も温かくなってきて、静かに眠っていた。


「ひとまず、救急車は呼ばなくても大丈夫かしら……でも、一体何が」

「なずな? どうした?」

「……いえね? あの子、服着たままだったじゃない? しかも冷水浴びてたのよ? 多分あたしたちが駆けつけるまでずっと」


 彼女がそう言ってみんなは黙ってしまう。
 一体彼女に何が起こったというのか……。