道着に着替え、髪を高い位置でお団子にした葵が、更衣室から出てくる。
「さあアカネくん! 勝負といこうじゃないか!」
「えっと、あおいチャン? おれ、別に言えるんだけど……」
「いや、取り敢えずアカネくんの本当の実力が知りたいなあと思って」
「いやいや。おれおじいちゃんに負けてるし」
アカネがそう言うと、葵は鋭い目になる。
「本当にそれが君の本気か? アサジさんはちゃんと気づいてるぞ」
「え?」とアカネは祖父の方を見るが、彼はぷいっと顔を逸らすだけ。
「いつまでも本気で来ないアカネくんに、痺れを切らして投げたに決まってるじゃないか。ごめんけどわたしは本気で行くからね、アサジさんみたいにやさしくはないよ。……君がそのままなら、アサジさんが参ったと言ったわたしには、一生勝てやしない」
葵のわかりやすい挑発に、アカネの瞳に炎が宿り出す。
「わかった。おれも本気になる。でもあおいチャン、おれに一回投げられてるの忘れてない?」
「そんなのわざとに決まってるじゃん。わたしも、今回ばかりは手加減しないよ」
そんな会話を余所に両親たちは、「え? 父さん参ったしたの?」「あの子には到底勝てそうにない」なんて話をしていたけれど。
全員が、不安と期待を胸に、いよいよ葵とアカネの本気の勝負が始まる。



