すべてはあの花のために②


 道着に着替え、髪を高い位置でお団子にした葵が、更衣室から出てくる。


「さあアカネくん! 勝負といこうじゃないか!」

「えっと、あおいチャン? おれ、別に言えるんだけど……」

「いや、取り敢えずアカネくんの本当の実力が知りたいなあと思って」

「いやいや。おれおじいちゃんに負けてるし」


 アカネがそう言うと、葵は鋭い目になる。


「本当にそれが君の本気か? アサジさんはちゃんと気づいてるぞ」


「え?」とアカネは祖父の方を見るが、彼はぷいっと顔を逸らすだけ。


「いつまでも本気で来ないアカネくんに、痺れを切らして投げたに決まってるじゃないか。ごめんけどわたしは本気で行くからね、アサジさんみたいにやさしくはないよ。……君がそのままなら、アサジさんが参ったと言ったわたしには、一生勝てやしない」


 葵のわかりやすい挑発に、アカネの瞳に炎が宿り出す。


「わかった。おれも本気になる。でもあおいチャン、おれに一回投げられてるの忘れてない?」

「そんなのわざとに決まってるじゃん。わたしも、今回ばかりは手加減しないよ」


 そんな会話を余所に両親たちは、「え? 父さん参ったしたの?」「あの子には到底勝てそうにない」なんて話をしていたけれど。

 全員が、不安と期待を胸に、いよいよ葵とアカネの本気の勝負が始まる。