オウリは首を傾げながらも少し離れて、さっき書いた文字を木の棒でつんつんと突く。
「へ、変態さんにはなってないよ? 少し、アキラくんの話を聞いてあげてただけ」
そう言うと彼は足で文字を消して、また書き始める。
〈でも絞め技かけようとしてた〉
「ち、違うぞオウリくん。決してそんなことはないが……もしかして技かけられたかった?」
そう言うが早いか、こくこくっと彼は首を縦に思いっきり振った。
それに葵が軽くショックを受けていると、オウリはにっこり笑ってとんとんと肩を叩く。顔を上げてみると、〈冗談だよ♪〉と書かれた文字が。
「(君が冗談を言うなんて思わないでしょう)」
すると彼はまた文字を書いた。
〈でも抱き合ってた〉それから〈何かあったの?〉と。
ああ、よく見てるんだなと思った。彼はもしかしたら、“そういうところ”に敏感なのかもしれないと。
「オウリくんも、多分気づいてるんじゃない?」
少しずつその時のことを話すと、彼はこくんと一つ首を縦に振った。
「やっぱりそうだよね。まあわかりやすいぐらいにおかしかったから、気づかない方がおかしいんだけど。本人はそのことに全く気づいてないみたいなんだよね……」
彼は何を思ったのか、文字を書き進めていく。
〈最近ぼーっとしたり?〉
書かれた文字に葵は頷いた。
それを確認するとまた彼は違うところに書き出す。
〈眠そうにしてたり?〉
こくりと一つ頷く。
〈時間を間違ったり?〉
もう一つこくりと頷いて、首を傾げた。
〈すっごく寝ちゃったり?〉
不思議に思いながらも、もう一度頷く。
〈記憶が曖昧だったり?〉
そして彼は、はっきりそう書いた。
「(……何かがおかしい。どうして……)」
【時間】【眠気】【記憶】
この不確かを、どうして君は知っているの……?



