父さんが、お前に厳しい稽古をつけていたのは、おれみたいにならないため。その時におれも手を出せばよかったんだけど。
それでも、もしそうなったときに、自分の身をしっかり守れるように、お前にキツく当たったんだ。早く早く、強くなって欲しいって、そう思って。
父さんが早くお前に継いで欲しいのは、自分がしてきたことを後悔してきたから。やさしいお前なら、そんな生徒を一人も出すことなく、いい生徒がたくさんお前の元につくと思ったから。
だから、その思い知っていた俺らは、父さんを止めることはしなかった。
でもやっぱりお前がつらそうだったから、逃げ場くらいはと思っていたんだけど。
父さんがもう長くないって言うのも嘘でね。早く父さんはこの道場から出た方がいいって、そう思ってお前にそんなことを言ったんだ。
こんなに元気なんだもん。そんなすぐぽっくり逝くわけないよ。
本当の話を聞いて、アカネはただただ呆然としていた。
「そんなことが。あったなんて……おれ。全然……」
「でも、今のあかねになら『言ってもいいと思うよ』って、教えてくれた人がいたんだ」
チガヤは、葵を見てにっこりと笑った。
「言うタイミングがわからなくて悩んでたおれたちにあおいサンったら、母さんに電話しろって言って……ぷっ」
「チガヤさん! わたし命令してないです!」
「いや、それはいいんだけど会話が……ははっ!」
「あたしも電話もらった時は驚いちゃった! あかねから噂は聞いてたんだけど、本当によく気づく子ね?」
「アオイちゃん、一体何を……?」



