「お嬢ちゃんはここへ柔道を習いに来たいのか」
「いえ。今日はアカネくんの練習風景を見たかったのと、お祖父様のお手並みを拝見させていただきたいと思いまして」
葵がそう言うと、カナデと稽古中のアカネがぎょっとした。「集中」と祖父に言われてまた稽古に戻るアカネだが、どうやらずっと、そわそわしているよう。
「お嬢ちゃんたちは、あかねの友達か」
「はい。一緒に生徒会の仕事をしています」
「そんなものは放っておいて、早くもっと強くなって欲しいもんだがな」
「お祖父様は、何を焦っておられるのですか?」
「……何のことだ」と、彼は表情を変えないまま、アカネの稽古を見ながら答える。
「わしは、まだまだあかねが弱いから――」
「それでは、アカネくんがお祖父様よりも強ければ、『そんなもの』なんて言いませんか?」
食い下がる葵を、初めて彼は視界に入れた。
「わたしたちは、みんなで一生懸命生徒会の仕事をしているんです。それには誰も欠けてはいけません。もちろんアカネくんもです。彼の才能の見て、わたしは感動しました」
「お嬢ちゃんは、どうしてここへ来た」
「あなたとお話がしたくて。チガヤさん、それからお母様の薺さんから許可はいただいております」
いつの間に話をしたのかと、視界の端にいるカナデは驚いていた。
「わしはお嬢ちゃんと話すつもりはない」
「わかりました。それではわたしからは話さないので、アカネくんから話を聞いてください」
「それもするつもりはない」
「では一つ、わたしと勝負しませんか?」



